空っぽの知識
 かたよりまくった読書くんの日記
ちょっと紹介




 今年最後の本の紹介。



 越谷オサムさんの『陽だまりの彼女』

陽だまりの彼女 (新潮文庫)陽だまりの彼女 (新潮文庫)
(2011/05/28)
越谷 オサム

商品詳細を見る


 本屋でたまたまタイトルに惹かれて買ったんですが、これがめっちゃくちゃ面白い。序盤のべたべたな恋愛小説雰囲気が臭すぎないレベルで心地よく、そして中盤からの不思議な雰囲気と、後半への流れが本当によかった。
 出来るだけネタばれはしたくないのでこの辺で終わらせておきますが、ひさしぶりにいい恋愛小説を読んだと思います。
 とりあえずお薦めとしては一気に読むことです。何も考えずに一気に。自分は半分くらい読んで、途中でバイトに行ったせいで、余計なことを考える時間があってしまい、その結果真相に気付いてしまった……orz。これほど真相に気付かずに流れで読みたいと思った作品はなかったんだけどな……。




 読書日記に書こうとも思うんだけど、どうしてもこれは紹介したかった。タイトルに惹かれて買ってアタリだったなんて本当に久しぶりだったんだよ。






 ではでは、明日も出来れば更新して一年を終えたいですね。

スポンサーサイト
『吐きたいほど愛してる』感想
吐きたいほど愛してる。 (新潮文庫 し 58-1)吐きたいほど愛してる。 (新潮文庫 し 58-1)
(2007/07)
新堂 冬樹

商品詳細を見る




 友達から借りて読了。
 凄惨です。最高レベルにグロテスク。
 僕は本は濫読していますから、もちろんそういうグロシーンやエロシーンにも何度もぶち当たっているのである程度の耐性はあると思っているのですが、これはちょっと苦しかったです。
 あまりにも緻密な描写と、直接的な表現。
 ごまかすどころか前面に押しだしているのが、魅力ではあるんですけどね。忠告しておくと、合わない人には絶対に合いません。あと、食事中や食後まもなくに読むのも止めておいたほうがいいです。吐きそうになりますから。(実際僕は弁当を吐きそうに……)

 暗黒系純愛小説といわれるくらいあって、ホントに黒い話ばかりが短編で四つ続きます。そのどれもが純愛をテーマに添え、それでいてその愛は、どこか狂気を孕んでいる。

○半蔵の黒子
 主人公、毒島半蔵は、自分に対し絶対の自信と自尊の気持ちを持っている。実際のところは正反対の容姿・性格の彼は、その思い込みの激しさから、常に周りに忌避されていた。
 そんな彼は、学生時代の初恋をいつまでも引きずっている。異常なほど自尊心が高いため、女に言い寄れば断るはずはないと思っているので、あいてが断った理由についても自分が悪いのだとまったく思わない。
 そんな彼の狂った一途な心情は、最終的にひどい惨劇を招く。

 正直に気持ち悪かった話。やばいですよこれ。物理的にも感覚的にも。主人公のナルシストぶりも、ここまで徹底されるとこっけいに映ります。
 少しずつ半蔵が異常であるということが明かされていく書き方には素直にすごいと思いました。そして最後の疾走感が、奈落の底に落ちていくようで……。


○お鈴が来る
 妻が妊娠中に、浮気をしてしまった『私』。
 会社の若い女性の強引さに流されるままの一時の気の迷いであったと自分の中で言い訳をし、二度と同じ過ちを繰り返すまいと妻にも黙っているつもりだったが、妻は浮気のことに気づいていた。
 それから、妻の精神に異常が出始める。
 通常の思考から離れた奇怪な行動。支離滅裂な、噛み合わない会話。そして、いるはずの無い日本人形におびえる姿。
 彼女がそうなってしまったのは自分の所為だと思い始めは耐えていた『私』だったが、最後には命の危険を感じまでに。そして、惨劇が。

 妻の狂気が、リアルでした。見ていて苦しいし、痛々しかった。
 『私』のほうが全面的に悪いとは言え、見ていてかわいそうになりましたね。確かに妻がこんなことになったら逃げたくもなるわ。
 「お鈴が来る、お鈴が来る」ってのが、実際な聞いてもいないのに頭の中で反響してやりやがりますよ。
 しかし、最後のどんでん返しがこの話はすごいです。あまりにも見事で爽快な気分になるのですが、なんだか全体的に鬱に落とされるというこの感情……


○まゆかの恋慕
 『僕』はある日自分の車のそばでうずくまっている女性を見つける。どうやら交通事故にあったらしく、足に大怪我を負っていた。
 すぐに自分の部屋に連れていき、簡単な応急処置をする。そのあとで病院に行こうというが、彼女・まゆかは絶対に嫌だと拒否する。
 家族に連絡させようとするも、それも拒否され、仕方なく同居のような形でまゆかを自分の家に置くことに。その生活の中で、二人は次第に惹かれてく。
 しかし、その幸せな生活はある日、一つのニュースによって一気に崩壊し、惨劇に変わってしまう……

 今回の四つの話の中で、どちらかと言えば黒さが薄いと思われる話。といっても、まゆかはヤンデレの気ありですけどね。
 まゆかの境遇は、マンガや小説なんかでも結構ありがちですが、それでも感情移入できたのは、描写の力なんでしょうね。とにかく二人が可哀想でした。
 ただ、考えてみたら最後の『僕』は巻き添えじゃん……。


○英吉の部屋
 老いた英吉は、寝たきりの生活を送っている。その中で、毎日娘夫婦の虐待に耐えていた。
 昔は、素直な娘だったと英吉は過去を回想する。自分のやってきた、後ろ暗い過去や、成功のこと。娘への愛と、妻への愛。そして、その愛が故の数々の行動。
 それらは実際は妻と娘の苦しみしか招いていないのだが、そのことに英吉は気づかない。気づかないふりをしているのか、はたまた本当に気づいていないのかは分からないが、とにかく彼は終始自分のやったことは正しいと信じていた。
 だからこそ英吉は、寝たきりなのをいいことに自分に度重なる苦痛を与えてきた娘を、愛の無知という名の傲慢さで打つ。

 一番描写が過激だった話。
 虐待シーンなんかは物凄いです。始めは本当に英吉に同情しましたもの。
 でも、英吉の回想が終わったらそんな気持ちは消えうせてたけどね。
 この人の愛が、四つの話の中では一番ずれていると思います。自分勝手な愛という面では半蔵とも通じますが、英吉の場合はその愛がすべて相手のためになっていると思っているから余計にたちが悪い。
 っていうかね、そりゃあ娘も虐待したくなるよ。僕だったらたぶん殺す。
 最後の一文で、結局自己保身じゃねーかよ、って気分になりましたしね。なにより、自分勝手な愛ほど危険なものはないということです。



 一番好きなのは、『お鈴が来る』です。あの恐怖はすごいですよ。最後の喪失感もかなりきましたし。正直、一番ショック受けた。
 新堂冬樹は、初めて読んだのがメフィスト賞受賞作の『血塗られた神話』だったので、こういう作風のものを書かれてもあんまり違和感内のですが、もし『忘れ雪』とかいう純愛系の小説を読んでからから来た人がいたらきつかっただろうなぁ。
 僕自身は、『忘れ雪』などの純愛三部作はまだ呼んでいないので、この機会にでも読もうかと思い始めた次第です。


 最後に。思いっきり鬱になりたい人におすすめですよ~。


 「お、お鈴」 (by『私』/お鈴が来る)

『K・Nの悲劇』の感想
K・Nの悲劇 (講談社文庫)K・Nの悲劇 (講談社文庫)
(2006/02/16)
高野 和明

商品詳細を見る





 ●粗筋

 若くして成功した夫との新しい生活。だが、予期せぬ妊娠に、中絶という答えを出したときから、夏樹果波の心に異変が起こり始める。自分の中に棲みついた別の女――精神の病か、それとも死霊の憑依なのか。治療を開始した夫と精神科医の前には、想像を絶する自体が待ち受けていた。
 乱歩賞作家が描く、愛と戦慄の物語。





 胸に突き刺さるような、とても鋭い物語です。
 読んでいる間、なんだか説教をされているような気分でした。でも、考えを押さえつけられるような説教ではなく、諭されるような感じのものです。自分の今までの考え方がいかに甘いのかがよく分かりました。


 人工妊娠中絶を中心に、女性の母親になるという強い母性を描いた作品。自分の子供が欲しい、という気持ちは、男の僕も分からないわけじゃないですが、この憑依した久美という女性と、そして果波の無意識の意思の前ではその気持ち大きさに圧倒されてしまいます。
 そして、その必死な姿を見て、親になるということがどんなに大変で、またどんなに大きなことなのかが、ぐさりぐさりと胸に突き刺さるように伝わってきました。

 子供を産むのには、お金がかかります。そのことは知識としては知っていても、僕自身どれくらいの金額がかかるのか、詳しいことまでは知りませんでした。
 なので、経験者である両親に聞いてみると、出産費用だけで約三十万円くらいかかるそうです。約三十万……って、今のうちの両親の給料くらいあるじゃないですか……。
 もちろん、それだけでは終わりません。出産をした後にもいろいろと買い揃えたりしなければなりませんし、とことんお金はかかってきます。しかもその状態が、子どもがいる以上ずっと続くのです。うちの親が毎月通帳を見て頭を抱えているのを見ているのでそれはよくわかります。っていうか、いつか自分もこうなるのかと思うと、そこはかとない不安が胸に重たくのしかかってくる……。


 と、上のような事実があるのですが、実際これを数字的な問題で現実的に意識して子作りしている人間がどれだけいるでしょうか。

 本書の中から紹介すると、日本で一年間に妊娠をする人間は百五十万人いますが、そのうち人工妊娠中絶を行う人間は三十四万人にもなるそうです。
 百五十万人中、三十四万人。――つまり、妊婦の四人から五人に一人が、中絶を行うということ。このことを作中で磯貝という医者が、「中絶胎児が人間として認められれば、日本人の死亡率トップはガンではなく、人工妊娠中絶ということになります」と揶揄していました。
 性観念に疎いというよりもルーズな日本ならではの数字かもしれませんが、しかしこれは酷いと思います。如何に、日本人がただ一度の快楽のために馬鹿なことをやっているのかがわかります(これはギャグでなく、です)

 そりゃあ、僕だって男ですから性行為に対して欲求がないわけじゃないですが、最低限の注意ぐらいはするべきだと。……しかし、性教育を受けた人間なら、こんな迂闊なことはしないと思うんですが。



 まあ、だからこそ、経済的に自立できないままで子どもを作るなんてことをすると、この本の主人公、修平みたいになっちゃうぞ、と。

 いや、マジで他人事でも笑い事でもないんですけどね。将来自分もぶち当たるかもしれない問題ですし。






 読み終わっての全体の感想としては、人間の醜いところもリアルに出しつつ、救いのあるようなきれいな話だったな、という感じです。
 終わりよければ全てよし、という感じも受けるかもしれませんが、僕としてはまったく問題ありません。っていうか、この物語でアンハッピーエンドをやられたら、僕はへこんで立ち直れなかったかも。

 作中キャラで一番好きなのは、精神科医の磯貝祐次。責任感の強いその姿が、とても魅力的でした。一生懸命だしね。
 あと、一番苦手なのは中村久美。憑依した人格なので、実際は果波の作り出した人格とはいえ、あの憎しみの生々しさにはえぐられるような苦しさがあります。つーか、子どもに対して慈愛の笑みを浮かべている姿すら怖かったです。





 まだ読んだばっかりなんで、なんかいろいろと整理ついてないのですが、ここまで勢いにまかせて書いてきました。この気持ちはなんか文章に表しておかねば、と思ったのですが、結構すっきりしたかも。
 とにかく、いい話でした。っていうか、いい教訓です。
 ……そうですね。一番読後の気持ちを表すのに、いいセリフが、恋愛についての本を書くとして、どんな構想をするか時かれたとき、主人公の夏樹修平のこのセリフです。

 「避妊をしなければ子供ができる。そんなことも分からない奴等は、恋愛をするな。膣外射精は避妊ではない。子供が出来たら責任をとれ。畜生以下の存在に成り下がるな」

 なんかこの本で食らうパンチを一転にまとめたようなものです。まあ、実際彼自身が体験したことですしね。


 まあ、そんなこんなで悲しくも明るい、面白い物語でした。
 ちなみに、ここまで書いてきたことを振り返って、「自分、なんか子供を産むことに関することしか書いてないな」と思ってしまったので補足しておくと、この本、サスペンス自体かなり面白いです。お勧めお勧め。



 「お前の言う通りだ。俺はこの手で、何人もの赤ん坊を始末してきた。なぜだと思う? 無責任な親たちが、社会が、子供を殺すことを望んだからだ!」 (by磯貝祐次)


『レインツリーの国』の感想
レインツリーの国 レインツリーの国
有川 浩 (2006/09/28)
新潮社

この商品の詳細を見る




 なんだかんだで初めてになるのですが、本の紹介を。

 紹介するのはこの本。有川浩の『レインツリーの国』

 同作家の作品、『図書館内乱』という本があるのですが、その中に『レインツリーの国』という架空の本が出てきていて、本書はその実物という形です。

 で、この有川浩って作家、本当にすごいんですよ。今まで出版されている分は一応全部読んだんですけど、僕的には一作もはずれがないんですよ。
 文章も綺麗だし、登場人物はいちいちキャラ立ちしているし。何より、リアルなんですよね。この人は大抵自衛隊を中心に置いたSFを書いているのですが、それにしては妙にリアル……。現実にはありえないようなことが起こるというのに、不思議と不自然さを感じさせないのです。


 で、そんな作家の初めてのSFでない話。自衛隊も透明な未確認飛行物体も巨大なザリガニも身体が塩になる病気も図書館に軍隊があるような世界もないのですが、それでもとても面白いです。

 何が面白いか? それは、やっぱり話にリアリティがあるからです。


 レインツリーの国は、ある社会人の男性と、ある障害を持った女性の恋愛物語です。恋愛、というのは、それだけで十分一つの物語が出来ます。ひとそれぞれ、千差万別。様々な物語が生まれる。この本は、少しだけ特殊だけど、その恋愛物語の一つに過ぎないのです。


 だけど、この本は恋愛一本の作品で今まで読んだ中でトップクラスに入る面白さでした。主人公たちがぶち当たる現実的な問題が、とにかく胸をえぐるえぐる。二人が喧嘩するシーンとか、あまりにもリアル過ぎて目をそらしたくなるほど苦しい。ラノベ畑からやってきた作家でここまでのリアルさを出せる人はどれくらいいるだろうか。

 と、ちょっと大げさな表現かもしれませんが、そう思うくらいにすごかったのです。






 きっかけは、昔読んだ忘れられない本。
 その本に他の人はどんな感想を抱いたかを知りたくて、伸行はインターネットで本の名前を検索にかける。
 その中でヒットした一つのサイトが、『レインツリーの国』。
 そこの管理人であるひとみは、伸行と同じような感想を抱きつつ、少し違った考え方をしていた。
 伸行はその感想に興味を引かれ、衝動のおもむくままにブログに表示してあったメールアドレス宛にメールを送る。ひとみの感想に対して、何かしらの反応をしたかったから。
 伸行にとってはメールを送るだけで十分だった。変身を期待していたわけではない。しかし、そのないはずの返信がやってきた。

 関係が繋がったのだ。

 そこから、伸行とひとみの関係が始まる。



 きっかけは、昔読んだ一冊の本です。
 その本のラストが、二人の関係には常にあると思います。
 どうしようもない現実を前に、二人でやればなんだって出来る、などという戯言は通用しません。現実は残酷です。そのことは、たかだか17年しか生きていない僕でも分かるのですから、社会人の方なんかは嫌というほど身にしみているでしょう。
 でも、だからと言って諦めるのが正しいというわけではない。それが最善だとしても、正しいことであるは言い切れないのだ。
 いろいろと困難にぶつかりながらも、最後は一緒にいることを選んだ伸行とひとみ。二人はこれからも考え方や立場の違いから衝突を繰り返したり、苦しんだりするだろう。でも、一緒にいたいと二人で決めたのだから、行けるところまで行こう。



 こういう結論は、人生そのものだと思います。
 何が起こるか分からない。それなのに、起こることにおびえて何もかもを諦めていてはいけない。ためしでもいいから、一歩を踏み出すことが大切なのだ。
 そういったことを再確認させてくれるような、とても胸にしみる物語でした。





 「行けるとこまで行こうや。だって二人のことやん。二人とも降りたくなったら降りたらええやん」 (by向坂伸行/レインツリーの国)




プロフィール

西織

Author:西織
この欄を編集するのを完全に忘れていた男。今年の四月に新社会人という名の社畜人生に一歩を踏み出した。



性別:男
年齢:22歳
血液型:A型
趣味:読書&執筆
将来の夢:作家(前途多難)

本の感想などを見たい人は、こちらをどうぞ
『空っぽの知識(読書日記)』
http://emptyreader.blog81.fc2.com/

自作小説専門のブログ作りました。
『空っぽの知識(自作小説)』
http://emptynovel.blog83.fc2.com/

同じFC2ブログを三つも作ったことにより、他のブローカーに訪問者履歴的な意味で迷惑が……あの、本当に申し訳ございません。


何か連絡があれば、こちらにお願いします。
alred_marchen☆hotmail.co.jp
(☆を@に変えてください)



フリーエリア



最近の記事



最近のコメント



最近のトラックバック



月別アーカイブ



カテゴリー



FC2カウンター



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



ブログ内検索



RSSフィード



リンク

このブログをリンクに追加する