空っぽの知識
 かたよりまくった読書くんの日記
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殺人衝動~不条理な世界~
 ラ研祭りに投稿した作品です。

 この物語に出てくる人間は、誰もまともなことをしませんし、言いません。ただただ、不条理の中の秩序にしたがって生きています。

 『私』はその中で、少しずつ己の『衝動』に飲まれていく――




 で、これが例の投げっぱなしジャーマンです。

 本気で投げていますので、何かしらの論理的な解決は期待しないでください。まあ、想像はいろいろできそうですけど。


 では、続きから読む、で。






 何があったのかは分からない。っつか、分かりたくも無い。
 ただ、結果だけが目の前に横たわっている。
 それに対して思うことは――まあ、多少あることはあるけど――それ以上に疑問の方が強すぎてどうとも思わない。
「あー。なんなのこれ」
 足元を見ながら呆然と呟く。
 真っ赤な床。そしてその赤い液体がしみこんだ絨毯の上に寝転がる一人の人。
 次に、視線を少しだけ上にずらし、自分の身体を見る。
 真紅に染まったニーソックスを履いた足。そして、同様の色に濡れている制服と腕。そしてそして、不思議なことにその腕には、私には縁もゆかりもなじみもまるで無い、細い金属の塊が握られていた。
 金属バット。
 あの、野球に使うあれ。
 少なくとも、今まで真面目に人生という名の仕事を勤続してきた、スポーツになどまるで興味の無い私にとっては、おおよそ必要のあるものとは思えず、よく考えてみたら持ったことは今が初めてだと言い切れる。
「…………」
 金属バットを手に持って、勤続バッド。
 エンド。
 なんちゃって。
 すみません。調子に乗りました。
「えーと、あれ? 何考えてたんだっけ?」
 馬鹿な方向に現実逃避し始めた意識をとりあえず引き止める。おい、とりあえず考えよう。壊れるならそれからでいいから、な?
 …………。
 よし。私は正常だ。
「まず、現状を確認しよう」
 私の目の前には、血を盛大に噴出して倒れている人がいる。
 私は、返り血を大量に浴びている。
 そして極め付けに、私はこの手に凶器と思われる金属バットを持っている。
 これらの条件から引き出される、最適かつ最良の、誰もが疑問をはさまないような決定的な答えは!?
「……やっぱ、私が犯人、だよね」
 はぁ、とため息をつく。
 この状況じゃ、身に覚えが無いなんて言っても誰も信じてくれんだろう。
 でも信じて。私本当に何も知らないの。うるうる。
「――って、誰に媚びてる」
 一人で乗り突っ込み。
 言葉では言い表せないようなむなしさが室内に充満した。
 うん。ぼけるのはやめて真面目になろう。
 まず、私はしゃがんで床に倒れている人を観察することにする。――その人は男性のようで、中年過ぎのおっさんだった。特筆すべき点としては、まず髪の毛が薄い。それはもう、後頭部がバーコードのようになっているとでも言えば、どういう頭か想像できるだろう。こんなの、漫画かアニメだけの世界だと思ってたよ……。
 男は、その薄い頭のおでこの部分から右目の部分にかけて頭が潰されていた。とりあえず、何回も殴っているのが分かるくらい、傷口はぐちゃぐちゃになっている。酸化して赤黒くなった血液がこびりつき、白骨をドス黒く変えている。そして、その間からまみえるピンク色の物体。はじめはなんだか分からなかったのだが、すぐに脳みそだと理解した。ああ、そうか。これが噂の脳みそか。しかし、こんなのを見てきれいと言っていいのか、グロイと言っていいのか……。
 変なところに悩みながらも、思考とは別に手は勝手に男の首筋に動いていた。ぬめりとした感触を指先に感じながら、脈を確認。当たり前ではあるが、脈は確認されなかった。
 完全に死んでいる。
 まあ、見た目で分かりきっていることだけどね。
 さて、どうしたものか。
「そもそも、この人誰?」
 ふと、根本的疑問に返る。
 一体何の因果でこんな中年ハゲオヤジと私は一緒に居るんだ?
 オヤジは、少しよれよれになった背広を着ている。私は躊躇しながらも、その背広の内ポケットに右手を突っ込んで中身を確かめてみる。右ポケット、何もなし。左ポケット。なにやら角ばった紙のようなものが。
「ん、……何だ。名刺か」
 手にとって見る。えっと、名前は『小沢幸雄』って書いてある。どこかのマーケティング会社の社員と書いてあるが、この人の名前だろうか? いや、一枚だけしかないし、もしかしたら交換した後のものかもしれない。
 それだけでは判断材料として弱すぎるので、今度はズボンのポケットの方に移動する。えっと、財布は財布は……やっぱり、尻ポケットにあった。いつも思うんだけど、これって落としたり取られたりしないのかな? すぐに盗まれそうな気がするけど。
 まあ、私には関係ないか。そう割り切って、財布を抜き取り、中身を見る。えーと、まず最初に見るのはやっぱり札だよね。札、札、お札~。
 お札は、千円札一枚だけだった。
 しかし、すごいことに野口さんではなく夏目さん。
……お、おお。これは伝説の夏目さんではないか! あの夏目さんだよ夏目さん。最近見ないレアもののあの人、明治の二大文豪とまで呼ばれた夏目漱石さんだよ。
 これは珍しい。しっかりと保存しておこう。と私は夏目さんを自分の財布に何の疑問も持たず、自然な動作で移した。
 と、この時点で強盗殺人の容疑者決定だった。
「さて、と。気を取り直して名前名前」
 財布の中を漁り続ける。小銭入れ、異常なし。カード入れ、ポイントカードやプリペイドカードなど多数ある。そのうち、どこかの電気屋のポイントカードを見ると、『山澤修司』と書いてある。十中八九、こちらが本名であろう。
 あー、やっぱ、名前あったんだ。
 当たり前のことではあるが、結構失念していたこと。
 この人の、名前。
 この人が生きていたという、一つの証明。
「――――」
 私は、山澤修司を見下ろす。一体どんな人だったんだろう。名前や仕事はとりあえず分かった。では、年齢は? 家族は? 趣味は? 特技は? 性格は?
 見ただけでは分からない。でも、この人にもそういった生活があったはずである。生きていた以上、この人の世界があったはずである。しかし、その生活はもう帰ってこない。『私』が壊してしまったのだから。
 そこのところ、どうよ。私?
「……って、いきなり何をマジになってんだ私は」
 いつでもクールな冷めた私はどこへ行った。
 この惨劇に遭遇して、宇宙の果てに霧散したか? それともどっかのひぐらしの音にかき消されたか?
 さすがにこの状況で私が殺していないなんて楽観的なことを考えることはしない。いくら記憶がないからと言って、それはあまりのも自分のことを信じすぎだろう。だから、私が殺したことは認める。でも、それがどうした。
 私が殺したからと言って、この人は明らかに私の知らない人なのだから、何の感動も浮かぶわけが無い。それとも何か? ここで取り乱して泣き叫べば、らしい反応と思われるだろうか。そうは言っても、出ない涙は出すことできない。
 薄情者と思うのなら言っても構いませんよ? どうせなんとも思ってないのは本当ですから。
「あー、自分で言ってて嫌になってくんな」
 白々しすぎて吐き気がする。私はそんなに罵ってほしいのか? Sなのか? あん?
 …………なんか酔っ払って絡むおっさんみたいだ。
 冷静になってみると、とても恥ずかしい情景である。
 ってか、こんな風に荒れるなんて、やっぱ動揺してるのかな、私。いつもより思考回路が混乱しているような気がするし、それに記憶も曖昧だし。記憶がはっきりしないだなんてこと、今までなかったのに――
「あ、記憶」
 ふと、思い至る。
 ――私は、一体どこまで記憶が無いのだろう。
 そもそも、少しぐらい疑問に思わないものだろうか。記憶が無いなんて普通ではありえない状況なのに、平然としているし。でも、結構そんなもんかな? 
 それより必要なのは、現状を確認することだ。
 思い至ったら、今度は焦りが来た。おかしい。私が今現在立たされている現状も十分おかしいものだが、しかしそれ以上におかしなことが目の前に立ちはだかっている。
 そう、名前。私は一体誰だっけ。それを一番初めに確かめるべきだ。それが一番最良かつ最高で優良な手段だ。それが分からなければ話は少しも進まない。
 名前。名前。名前。私の名前。私という固体を表す名前。私の存在証明。
 ほら、考えればすぐ出る。だから焦るな、混乱するな。
 そう、混乱さえ、しなければ……。
 冷静になれば、通常と同じになれば、自然に思い浮かぶ。
 ――その、はずなのだ。
「あれ?」
 なのに、何故……
「私、名前なんだっけ?」
 呟きは、部屋に響いて空しく吸い込まれていった。


               ※※※


 落ち着いた。
 時間はかかったけど。
「……なんていうか、現金なものよね。私」
 目の前の惨状を見下ろしながら自己嫌悪にまみれつつ呟く。
 死体があって血が飛び散っている以外は比較的まともだった部屋は、今では超局地的台風でも通り過ぎたかのごとく散らかっていた。
 清潔そうなシーツが張られていたシングルベッドは、無残に切り裂かれている。戸棚の上にあった花瓶やスタンドは当たり前のように割れて床に散らばっている。花瓶の中の水は絨毯にしみこんで血をにじませているようだ。窓の傍にあるカーテンも引きちぎられているし、小さなテーブルはひっくり返ってアシが変な方向に向いている。
 自分の名前を思い出すことが出来なくて狂った私がやらかした結果だ。
 ……弁解するわけじゃないけど、これをやらかしていたときの記憶はあまりはっきりしない。ただ、無性に暴れたくなってカッとなったところまでは覚えている。
 あー、まずい。末期だ。暴れたら落ち着くなんて、明らかに精神不安定な状況だ。
「弁解は、……不能だね」
 よし、そのことは認めよう。私は今精神的に安定感を失っている。そしてその上、記憶障害が少々ある。さっきは自分の名前が思い出せなかった。そこも認めよう。――では、ほかはどうだろうか? 性別は……今自分が着ているスカートや胸のふくらみを見て判断すると、まず間違いなく女だろう。これが男だったらただの変態だ。では、歳は? それはすぐに答えが出た。高校一年生、十六歳だ。何か根拠があるわけではないが、ふと頭に浮かんできた。多分間違いはないと思う。
 うん。調子がいいぞ。ではそのまま突き進もう。私の家族は? たしか、四人家族だったのを覚えている。父と母、そして妹の四人家族。では、その家族の名前は……っち。苗字だけが出てこない。名前は、父が隆成、母が小奈、妹が雪名。名前は分かるのだが、苗字が出てこないというところを見ると、本気で私は自分に関することを忘れてしまっているようだ。
 と、ここでひとつ思い出したのだが、そういえば先ほど夏目さんを財布に移したときに、考えてみたら自分の財布を取り出していた。財布には、自分の手がかりが何かあるかもしれない。大きな期待を抱きつつ財布を取り出し中を見る。
 ……甘い。甘すぎた。財布の中には学生証やポイントカードの類のものは一切なかった。その代わりにあるのは大量のレシート。そしてそれを見てとても自然な光景だと思う私。そうだよ。学生証はいつも鞄の中だし、ポイントカードの類は面倒くさいからと言って一回も作ったこと無いよ私。
 手がかりが一つ消えた。確かに悔しいし、昔の私を全力で怒鳴ってやりたい衝動にも駆られたが、そこは抑えて次の問題を考える。
 とりあえず、部屋をぐるりと見渡す。そういえば、暴れたりとかしたけど、部屋をじっくりと観察することはしていない。と、言うわけで観察タイム。えーと、まるでどこかのホテルの部屋みたいだな。あ、ラブホじゃなくてビジネスホテルね。――まあ、ラブホなんて行ったことないから違いなんてわかんないけど。
 ベッドのサイズや部屋の間取りから察するに、おそらく一人部屋だろう。大きくて上品で、かつ清潔だったベッドは、いまや無惨なことになってしまっているが、とりあえずそれは無視しておくとしよう。
 ぱっと見、ここでこのオヤジが殺されるまでに何があったかは分からない。まあ、それでもあえて推測するのなら、突然このオヤジに部屋につれこまれ暴行されそうになったところを、近くにあった金属バットで迎撃。相手はすでに動けない状態になったが、混乱した私はそのバットを止めることなく何度も振り下ろしてしまった。ってところだろうか。
 ……あー。でも、これって正当防衛になるね。こんな自分がさも悪くないとでも言うようなシナリオを真っ先に思いつくなんて、こんなときまで自分を擁護したいのか私は。
 と、事の真偽はもういいや。相手が死んでいる以上、もう永遠に分からないことだ。そんなことをごちゃごちゃ考えていても先には進まないんだ。ダンジョンのはじまりの町でずっと右往左往しているつもりじゃないんだし、ここはとっとと次のステップに進むべきだ。
「部屋は、もう見るところないね」
 ぐるりと見渡して確認。んー、そういえば、電話がないな。普通こういう部屋には必ずある電話。
 よく考えると、この状況って警察に連絡しなきゃじゃない。悪いことしたってくらいは私にも自覚あるし、ちゃんと連絡しなきゃ。
「あー、でも、やっぱり捕まるのかね」
 まあ、それもいいかなぁ、と思いつつ電話を探して右へ左へ。こういうところだから、無いわけは無いと思うのですが。
 ちなみに、携帯電話は持っていないので探す必要ない。どうも、そういう日常的に行っていたことなどは無意識のうちに覚えているもののようだ。
 で、結局電話だけど、鏡が割れて横たわっている化粧棚の後ろにあった。――本体と受話器をつなぐ線が切れた形で。
 どうもさっきの私の暴走が原因のようだ。
「は、はは。ここに来てこの落ち」
 もはや笑うしかない。
 あと、それを探す途中におそらくオヤジのものと思われる携帯も見つけたのだが、こちらも無残に真っ二つだった。なんだか、自分の凶暴性がとても恐ろしくなる一品だった。
 ……電話が無い以上、ここにいる理由はもう無い。ってか、あんまりずっとここにいると、話は動かない上に、いろいろと困ったことになるしなぁ。とりあえず外に出て、それから公衆電話でも探すか。
 思い至ったら膳は急げ。ぼうっとしていたらお昼の購買は売り切れる。これ鉄則。なので私はとっとと部屋の外に出るため、扉の前に移動する。
 そして、扉に手をかけようとしたところで――
「ん?」
「あれ?」
 疑問の声が、二つ響いた。


               ※※※


 響いた声のうち、一つはもちろん私だ。私以外の何物でもない。それは私自身が保障しよう。いくらプチ記憶障害を持っていようとも、ついさっきのことくらいは保障できるくらいの自信はある。
 と、それはいいとして、問題はもう一つ声のほうだ。落ち着いた、男性の声。それが響くとともに、手をかけようとした扉がひとりでに開いた。
 顔を上げて、正面を見る。目の前には、開いた扉。そして、その先に居るのは、ひょろりとした一人の男性。いったい何センチあるのだろうか? 背が高いため、私が見上げる形になる。見上げたその人の顔は、一言で言ってしまえば糸目で、人畜無害そうなつくりをしていた。
 その顔を怪訝そうにしながら、その男は私を見つめてくる。私は私で、困りきって硬直してしまっているため、この場所はまるで時が止まったかのごとく動かない。
 止まった時を始めに動かしたのは、相手の方だった。
「あらら。どうも、連絡が無いと思ったら」
 困ったように彼は肩をすくめながら言葉を続ける。
「山澤は、ミスったのか」
「え?」
 山澤……。
 と、すぐにその名前を思い出す。そうだ。私が殺してしまった中年オヤジの名前だ。
 しかし、何でその名前が今?
「仕方、ありませんね」
 そういいながら、彼の手が私の胸の高さまで上げられる。
 何をするつもりだろう? と一瞬疑問が走ったが、その疑問の答えはすぐに提示される。――私の身体が叩き飛ばされることによって。
「がっ……、な」
 肺から空気が無理やり吐き出される。そして、身体は部屋の中へ戻される。
 受身を取る、なんてことを期待されても困る。大体私はそんな特別なことを訓練していない。まあ、記憶が定かでないうちは絶対ともいえないけどっ、でも、少なくとも今私がそんな受身を取るなどという超人的なことができないことは確約しよう。なんと言っても、か弱い少女なのだから。って、そこ、突っ込みするな!
 などと変な方向に思考が傾いているうちに、私の身体は床に着地。もちろん盛大にぶつかりましたとさ。丁度隣にオヤジの死体があるところに行き着いており、もう少し向きがずれてたらやばかったなぁなどと比較的どうでもいいことが頭をよぎる。
 だが、あまりのんびりしている暇はなかった。すぐに追撃が来たからだ。男の手に握られているのは、刃渡りが十センチ程度のナイフか。そのナイフを片手で構えつつ、彼は私の方へ突進してくる。
 なんとか反応しなければ、と思う前に、身体が勝手に動いていた。
 私はその手にある金属バットで、彼が突き出してきたナイフを下から受け、弾き返した。
「っ! な」
 驚いたような顔をする相手。そんな彼に構わず、私の身体は自然に動く。
 そこに思考はなく、意思もない。ただの行動。ただの動作。その無作為の行為には、ひとかけらの思惑も存在していなかった。
 下から振り上げた状態で止めていたバットを、また振り下ろす。その際、重心は前にかけられ、身体が前のめりに。それは、少し距離をとった男を殴り倒すための動き。射程外の彼に、これで攻撃が届く。
 が、彼のほうもそうやすやすと受けるわけが無い。私のバットは、彼が突き出した腕によって防御され、それと同時に、彼は私との間合いを詰めると、二撃目を振るおうとする。
 まるでスロー動画でも見ているようであった。彼のナイフの動きが良く見える。見えるだけでなく、そのナイフが、どういう過程をたどって、どういう風に動くのか、というところまでが不思議と理解できる。
 私は、その動きの線に重ねるように、バットを引くようにして柄の部分で突く。すると、驚いたことに、丁度よく彼のナイフを持った手に当たり、結果的に攻撃を回避することに成功する。
 その勢いに乗って、バットを振るう。素人のつたない動き。しかし、それでもまったく無駄の無いその動きは、相手をうならせるのに十分だったようである。その証拠に、相手はいったん間合いを取るために後ろに飛びのいた。
「は、はは。これは想像以上ですね」
 呆れたように、顔を引きつらせながら彼は言う。
「これなら、山澤がしくじるのも納得いくってもんです」
「…………」
 何か、言ってる?
 聞こえない。何かを言っているようではあるが、内容が理解できない。一体何を言っているのだろう? ――理解、できないのなら……。
 ――別に、どうでもいいことなんだろう。
 そう結論付けると、バットを握りなおしてダッシュした。走りつつ、腕を振り上げ頭上からの一撃のために力を溜める。
「あー、もう話す気もない、か」
 対して相手は、仕方がなさそうに肩をすくめる。その様には、まだ余裕がある――? いや、そんなことはどうでもいいか。私は自分のやることをやるだけだ。
 そして、間合いが詰まる。
 バットの方が、彼のナイフよりも遙かにリーチが長い。この距離なら、反撃の心配もなく彼の脳天をぶち抜ける。
 その真っ白な頭蓋骨を叩き割り、
 赤い脳漿をぶちまけ、
 この部屋を、血の色に染め上げる。
 はず、だった。
 バットが振り下ろされる瞬間、彼の姿が唐突に消えた。――かと思うと、鋭い蹴りが右側から飛んでくる。全ての動作をリセットされ、私の身体は壁に叩きつけられた。
 地に落ちた瞬間に考えたのは、すぐに行動を起こすことだった。しかし、その暇を相手は持たせてくれない。彼はすぐに私の首をつかんで壁にたたきつけた。
「ぐ、」
 声がこもる。喉が圧迫されて、うまく息ができない。それでも私は、目だけで彼を見つめる。
 相変わらずの糸目。その表情を見る限りにおいては、彼が何を考えているのかは分からない。ただ、あまり余裕がなさそうであることは分かる。
 と、そんなことを考えていると、彼は空いたほうの手で、私のバットを持ったほうの手首叩きつけるように封じてきた。
「……まったく、油断なりませんね。少しでも隙を見せようものならすぐに反撃が来る」
 とか言っている間にも、彼は私の左腕の攻撃をひょいと避ける。そして、さらに首の圧迫を強めてきた。
「おとなしくしてくださいよ。とって食いや――まあ、今すぐにはしないのですから」
 知りやしない。ただ、私はアンタを……。
「私を、殺したいですか?」
 そう、私はアンタを殺した……。
 と、そこではっと我に返った。
「わ、たし、……何、を」
「ほお、ここで我に返りますか」
 このまま反転してくれてもよかったんですけどね。
 そう、どうでもよさ気に言う声が聞こえるがよく意味が分からない。なんだ、反転って。新手の曲芸か? どうでもいいけどその手を離してください。息が十分に出来ないので辛いんですけど。
「あ、苦しいですか? でも我慢してくださいね。またいつ凶暴になるか分かったもんじゃないですから」
「ぐ……凶暴、って。なんの話、ですか」
「あー、覚えてない、ってわけじゃないですよね? それとも、まだ実感が無いんですかね。夢でも見たような感覚で」
 相変わらずよく分からない。言いたいことがあるのならとっとと言ってほしいし、こっちの疑問にはとっとと答えてくれ。そうもったいぶる奴は大っ嫌いなんだよ。比較的クイズ番組が大好きなうちの家族において、私だけは回答までが長いという理由で嫌っていたくらいなんだからさ。って、そんなこと知らないって? そんな殺生な。
「って、もしもーし。そっち側に行ってないで戻ってくれませんか?」
「はっ。私は一体誰?」
「へ? いきなりなんですか?」
「え、ええ? あ」
 何気に一発で本題に入った。
 それも、途中経過を全てすっ飛ばして。
 ……よし、少し落ち着こう。
「あ、あの……、あなた、一体だれで、す?」
 とりあえず始めの質問としては順当なところだろう。始めに相手のことが分からなければ話しにならない。私自身のことを知るのは、それからでも十分のはずだ。けして、先ほどの質問を繰り返すのは恥ずかしいからと言って質問を変えてはいませんよ。そう、決して。
「ははは。やだ、冗談ですよね。そんなこと教えるわけ無いじゃないですか」
「そ、そうですよね。は、はは」
 と、苦笑い。
 っち。隙ねぇな。
「うーん。おかしいですね」
「? 何、が」
 私が答えるよりも早く、ぐっ、と首の締めが強くなる。ちょ、マジで苦しいんですけど。
「ん? あなた、ほんとに××××ですか?」
「は? 今、なん、て」
 かんじんなところが聞き取れなかった。多分、文脈からして私の名前だろうか? もしくは私を現す単語。
 しかし、私の疑問に彼が答える様子は無い。ただ、その糸目で静かに私を見下ろしている。
 締められ続けている首。しかし、それは苦しみの一歩手前、殺意のギリギリのラインを向けられている。それが、なぜか不思議と分かった。
 男は、ほぉ、と呟いたあとにやりと顔をゆがめる。
「そうですか。なかなか、優秀ですね」
「だ、だから、さっきからあなたは何を」
「人を殺してどう思いましたか?」
 私の質問を無視して、彼は問うて来る。
 あ? 意味が分からない。
 突然。何を言うんだこの変態は。
「人を殺した感想は、なんですか?」
 私の混乱を分かってか、彼は二度、同じ質問を繰り返す。
「あなたはそこにいる――えっと、名前は知ってますか? 山澤修司って言うんですけど、その彼を殺しましたよね。あ、言い逃れしても意味ありませんよ。分かっていることですから。――で、その感想を聞きたいわけです。初めての、殺人の感想を」
 彼は、あくまで静かだ。
 淡々とそのセリフを述べている。
 だから、私も首を絞められている状況だというのに随分と冷静になれた。
 ――初めての殺人、とこいつは言った、よね。
 あくまで静かな頭で思考を進める。
 初めて、ということは、私はこれまで殺人を行ったことは無いということだ。この男の言葉をどこまで信じていいかは分からないが、彼の口調とこれまでの言動からまず疑わなくても構わないだろう。
 では、この山澤修司殺害は、私の初犯、と。
 確かに、あのバットの殺し方は素人じみている部分があるように見える。何度も何度も殴っているのは、怨恨のためというより確実に殺すためと考えたら納得だ。だいたい、人間を一撃でしとめるにはそうとうの慣れが必要のはずだし。
 よし、そのことはよく分かった。
 さて、では次の疑問だ。
 さっきの私の変り様は一体なんだ?
 今でもまだかすかに感触が残っている。この男に向かっていったときの自分。まるで身体に羽がついたように、といった感覚で、身体がスムーズに動いた。
 あの、不思議な感覚は一体なんだったのだろうか? 男の言葉を借りれば、反転、とでも言うのだろうか。反転。――某アダルトゲームの殺人鬼か私は。……いや、あながち間違いでもないかもしれないけど。
「ん、黙ってないでさっさと答えてくれないと、この首ひねっちゃいますけど?」
「あ? ああ、あああっ。わ、わ、分かり、ましたから、そんなことしないで」
 ああ、くそ。考えをまとめる暇もない。
 ここは適当にでも彼の質問に答えておいたほうが得策か。うん。そうだ。
「え、えっと、殺人の感想、でしたっけ? ――あー、そうですね。あえて言うなら、夢中で全然覚えてないってのが本音です」
「誰も殺人の瞬間を聞いてはいませんよ。覚えてないってのも分かってます。そうじゃなくって、私が聞きたいのは殺人をしてしまったということを理解したときの、あなたの感想です」
「ん? ちょっと、覚えていないのが分かってるって、どういう――」
 くそ。言い終わる前にまた首を絞められた。どうやら向こうは私からの質問を受ける気はないらしい。
 どうも彼の言動を聞いていると私に何が起きたかは把握しているようだ。しかし、それでいて私に感想を求めてくるところを見ると、私の内面は理解していない。ただ、聞いていると、山澤修司が殺されたのはイレギュラーらしいからもっと焦っていいはずだが、それよりも私の気持ちを確かめることの方が重要のようだ。
 っち。首の絞め強すぎる。思考は一旦切って、こいつの質問に答えるか。そうすれば、少しでも隙ができるだろうし。
 確か、殺人についてどう思ったか、だよな。あは、それに関したらこれしか答えはないね。
「――なんとも、思いませんでした」
「ん? それは、どういう意味かな?」
 その『隙』は、きせずも意外と早くやってきた。
 私が話しやすいように、首の締めが弱まる。
 ――そう、弱まったのだ。
 ああ、これなら抜け出せそうだな、とその時の私は。頭の端の端の端、本当に端っこで少しだけ考えた。しかし、だからと言ってすぐに実行しようと思ったわけではない。

 でも、あの『衝動』は、そうは思わなかった。

 また、あの感覚が来た。
 私は、拘束されていないほうの腕を駆使して、相手の胸をどつく。
 驚いたような彼の顔。――予想外の攻撃に対応が遅れている。チャンスだ。私の『衝動』はそう判断し、どついた腕をそのまま私の首を絞めている手を払うことに使用する。あっけなく払われる腕。まだバットを持った右腕が拘束されたままだが、別に問題ではない。――要は、彼が拘束を解かざる終えない状況にすればいいのだから。
 その思考の元、私の手は彼の顔面に向かう。――正確には、彼の両目。この指で、彼の眼球を貫く。
 もちろん簡単にいくわけが無い。すぐにそれは庇われる。でも、そのおかげで拘束の方にかかる意識は薄くなる――!
 結果、緩んだ腕を振り払い、バットを馬鹿みたいに大振りする。しかし、その無茶苦茶な振り方が逆に彼をうまくのけぞらせる。今は少しでも彼との距離をとることが先決。そのために、私はわざと深追いするように立ち上がりざまにもう一歩、彼に向かってバットを振るう。
 私の『衝動』の考えどおりに距離をとった男に対して、繰り返し同じ言葉を告げる。
「……なにも、思わなかったって言ってるんですよ」
 言うと同時に、『衝動』が収まっていくのが分かる。先ほどのように、我に返るような感じではなく、あくまで収まっていく感覚。
「ふふ。この答えで、駄目ですか?」
 挑発するように、私はバットを彼に向ける。ついでに、にやり、と笑って見せたが、果たしてさまになっていただろうか? もしこれで滑ってたらすげー悲しいですよ。
 と、決まっていたかどうかは分からないが、彼は呆然としたように立ち尽くしている。そうとう意外だったのだろう。まだ何が起きていたのか分かっていないのかもしれない。うん。だったらこのまま混乱しっぱなしでいてくれ。
「何も感じなかった、か」
 しかし、私の願いは届かず、彼はぼそりと呟く。
「はは、まさか、ここまで成長しているとは。なかなか面白い。いや、あの人に言わせれば面白くないんでしょうが、私は十分楽しいですよ。あはは」
「……あのー、ショックが強すぎてとうとう壊れちまいましたか大将」
 だとしたら、私の記念すべき第二犯めです。はい。自慢になりません。
「いやいや、失礼しました。あまりにもあなたが予想外なので、つい楽しくなっちゃいました。別に他意はないですよ?」
 あくまで軽い調子で、彼は言う。
 その彼の調子は、本当に楽しそうであるが、如何せん彼の言っていることがよく分からないためこちらとしては面白くない。なんだか私だけを置いてきぼりにして世界が回っているようだ。
 なんだか釈然としないので、楽しそうにしている相手を私はせかす。
「いい加減、話を進めませんか? 私は知りたいことだらけで困ってるんですけど」
「ふふ、こうなったら、うまくいけばあのイノセントを越える逸材になるかもしれませんね。あ、だったら私の役割はここか。ははは。山澤が殺された時点で恐れてはいましたが、そうですか。なんて皮肉。でも、面白いですね!」
「って人の話を聞けよコラ!」
 完全に私のことを無視して感嘆の海に使っている彼に思わず怒鳴り声を上げてしまった。私のキャラらしくない。私はもっとクールなんだ。なのにこんな所で怒鳴り声のストックを使ってしまうとは……。 え? 全然クールなんかじゃない? だまらっしゃい。
 って、あ。私のほうが勝手に脱線してるじゃん。いけないいけない。
「く、くふふ。ねえ、××××さん。どうせこれから殺しあう関係になるわけですが、最後に聞いていいですか?」
「……や、いきなり殺しあうとかなんで勝手に決めてんですか」
「私には、譲れない思いがあります」
「…………」
 登場してからこのかた、この男が自分勝手で他人なんて眼中に無いような変態だということは分かったつもりでいたが、まさかこの期に及んで自分を語りだすとは……。
 微妙に痛い空気の中、軽い疼痛が頭に走る。痛い。あまりにも彼の姿が痛い。
 しかし、彼はそんなこと構わず私に語りかけてくる。
「ここで一つの区切りを迎えようとしていますが、その思いを遂げるまで、私は死ぬ気はありません。たとえあなたが××××であろうと、全力で相手をするまでです」
「……は、はあ、そうですか」
 なんだかすごいことを覚悟しているっていうか、今この瞬間にでも辞世の句を読み出しそうな彼の姿に、私は正直たじたじだ。だってよ、いきなり戦地におもむく男みたいなキャラされても困るだけでしょうが。
 あー、しかし、ほんと聞こえないな私の名前。どうなってんだろ私の三半規管。……え? 三半規管は違うって? ……も、もちろん分かってたわよ!
「あなたは、どうですか?」
「え?」
 馬鹿やってた所為で聞き取れなかった……。
 私が質問を聞いていないことは彼にもわかったらしく、仕方なさそうにもう一度「あなたは堂なんですか?」と言ってきた。
「あなたには、そういったものはありますか?」
「い、いや、あるか、って言われても……」
 正直、どうこたえていいのか困ってしまう。
 だって、真剣な話、分からないのだ。
 自分が何かも分からない。なのに、どうして自分の譲れないものが分かろうか。
 だいたい、今の私はかなり浮いている。自分の存在を意識できない人間が、自分の思いを理解しようなんて不可能だ。私は誰か。どんな考えを持ち、どんな性格でどんな趣向をもっているのか。それが分からなければ、譲れないものなんて出てくるわけが無い。
 と、始めはそんな風に真面目に答えようと思っていた。
 しかし、
「――殺す、よ」
 口から出てきたのは、まったく違う、全然意図していない答えだった。
 ちょ、私は何を……。
「私は、邪魔な人、立ちはだかる人、通り過ぎる人、目があった人、――みんな、みんな、少しでも関係を持った人を、私は殺す」
 強い人も弱い人も。
 善い人も悪い人も。
 高貴な人も卑しき人も。
 幸せな人も可哀想な人も。
 幼い子も、若い人も、老いた人も。
 老若男女、あらゆる人々関係なく。
 そこには、意思もなく、意志もなく、遺志もなく。
 ただひたすら、湧き上がる衝動のおもむくままに任せて。
「譲れないもの、という種類のものではない。どちらかといえば、そう――やるべきこと」
 すっと、鋭いまなざしを彼に対して向ける。
 すると彼は、キョトンとしたようになんとも言いがたい顔をしたあと、顔に手を当てて盛大に笑い出した。
「ふ、ふは、はっは。最高です。こんなこと、こんな答え。もしあの人が聞いたら、いったい何と言うことでしょうかっ」
 ふははっ、と大きく高く笑い続ける男。そこに、始めの落ち着いた面影はまったく無い。っていうか、もしかしてこっちが素か? 人格そのものがまったく別の人物にでも変わってしまったように見えるぞこれは。
「こちらも聞きたいんですけど、その、『あの人』って、誰なんです?」
 少しでも間をおいたらまた話を無視されかねないので、彼の言葉が終わるとすぐに質問を入れる。
 今度はちゃんと伝わったらしい。男は、にやりと不適に笑うと、ただ一言。
「覇者ですよ」
 と、答えた。
 …………。
 それ以上の説明は無いようだ。
 何だよ覇者って……。北海道のどっかの厚顔不遜なニートですかあなたは。
「ふふ。では、お互いの疑問とわだかまりが解消したところで――」
「い、いやっ! 解消してないから! 少なくとも、私の疑問は解消してねぇ!」
「――尋常に、殺し合いと参りましょうか!」
 あーもう! こいつ人の話し聞いてない!
 半分涙目になりながら、迫ってくる男に対してバットを構える。
 懐から何かを取り出す男。――あれは、ナイフか。そういえば、さっき持ってたナイフは、私を拘束するときに邪魔だから手放していたのが見えたな。実際今も、そのナイフはすぐそこに落ちている。
 素手でやる気は元から無く、あくまで殺す気できているようだ。
 今度も、ふっ、と意思が沈殿する。『衝動』のおもむくまま、身体が動く。軽い浮遊感が伴いつつ、私は彼に向かって距離を詰める。
 間合いはこちらのほうが長い。それは、始めから分かっていること。リーチが長い分、こちらのほうが有利。
 だが、逆にそのリーチの長さが仇となった。
「ん、なっ」
 バットを振りかぶった瞬間、男が一足のうちに懐にもぐりこんできた。――まずい。その距離は、バットを振るうにはあまりにも近すぎる。
 密着するほど近い、彼との距離。男はこのあと、ナイフを私に向けて突き出すだけだ。
対して私のほうは、攻撃をするどころか、始めにナイフを弾いたようにバットを引いての防御を行うことすら出来ない。
 絶体絶命の状況。このままでは、むざむざ刺されて終わりだ。

 ――防御が出来ない?
 ――それならば。
 ――避けろ。

 不意に、静かで、けれどはっきりとした声が頭の中に響く。
 あまりにも簡略化されすぎた指示。端的過ぎて、具体的にはどうすればいいのか分からない。しかし、その声に従うように、身体は自然と動いた。
 踏み込んでいた足に加えていた力を外に向ける。踏み込んだところで、すぐに反復横とびをするような感じだ。むろん、肉体的にかなり無理のある動作である。
 が、何とか身体を逸らすことができ、彼のナイフは服をかするだけとなった。その代わり、バランスは盛大に崩れ、倒れこむように床に落ちる。

 ――バットはもう不利。
 ――相手は間合いを理解している。

 分かっている。だいたい、小回りのきくやり手を相手に、こんな大振りの得物は不利にしかならない。相手はナイフの扱いに慣れている。それに対してバットは邪魔なだけだ。
 そう結論付けると、すぐにバットを手放す。そして立ち上がる前に、地を這うようにしてある場所へ向かう。
 男が手放していたナイフ。――戦闘を主眼に置いた、サバイバルナイフ。その鋭い刃は、扱い方次第ではかなりの脅威になる。
 滑り込みながら、それを奪取。途中男からの妨害としての蹴りが降ってきたけど、そんなの関係ない。軽々と避けてナイフを手に取ると、腰を半分起こす形でナイフを男に向けて構える。
 軽い均衡状態。しかし、それも長くは続かない。
 二泊置いて、私は地を強く蹴る。

 ――向こうは動きからしてプロだ。
 ――だったら、長引かせるのはまずい。

 OK、マイインパルス。
 同意し、前へ踏み込む。
 すぐに、彼の目の前にたどり着く。
 始めに動いたのは、相手の方だった。下から振り上げるような鋭い刃筋。だが、どこを狙っているのかは見切れる。その刃筋に合わせるように自分のナイフを引き、彼の攻撃を柄の部分で阻止。そのまま彼のナイフを振り払うと、自分のナイフを突き出す。
 相手が飛び退き避けたので、空振り。返す刀でもう一撃。――それも、避けられる。
 その調子で何回も切りつけるが、その全てをかわされてしまう。勢いに乗って攻め立ててはいるが、有効打が一撃も無い。
 それどころか、少しでも気を抜こうものならすぐにでも相手は反撃してくるだろう。そうさせないためにも、一撃一撃に決定打と同様の力をこめる。
 が、九撃目を加えたところで、平衡状態は解ける。
「っ!?」
 驚いたように男は顔をゆがめる。その男の背後には、壁がある。
 そう広い部屋ではない。端から端まで十メートルも無いのだ。大きな動きをすれば、すぐに壁にぶち当たる。
 そんなこと、彼にも分かっていたことだろう。その証拠に、彼は移動をするとき、壁を背にしないために、出来る限り広いほうに出るように動いていた。
 それが分かっていたから、誘導もしやすかった。後退させていると分からないように、微妙に円を描くように追い詰める。――衝動に任せていたから半信半疑だったけど、実際やられると、なかなか分からないものだということが今分かった。
 何はともあれ、追い詰めた。
 男は、苦し紛れにナイフを振るってくる。が、それははじめから予測していた。だから、迫る刃には注意を向けず、私は彼のその手を切りつける。
 そしてその位置から上に切り上げるように、二の腕と首筋に二撃。首筋の攻撃はかろうじて避けられたが、腕への攻撃は深く切りつけたようだ。
 休ませはしない。――このまま、一気に片をつける。
 どくり、どくり、どくり、どくり。
 心臓が高く波打つ。
 身体が熱い。

 ――間を空けるな。まだ相手は動ける。

 ナイフを地に水平に向ける。直接心臓を穿つには、肋骨に引っかからないようにしなければならない。

 ――そうだ。それでいい。

 声が、響く。
 それが響いたと同時に、私はその切っ先を男へ向けて放った――


               ◇◆◇


 なぜ、私は殺さなければならない?
 尋ねる。返答はすぐに返ってきた。

 ――それが、お前自身だからだ。

 私自身? どういう意味ですかそれは。
 どくり、と、また心臓が脈打つ。興奮が収まらない。身体が火照っている。まるで歓喜しているかのごとく。

 ――お前には、それしかないだろう?

 声が諭すように語り掛けてくる。
 そんなこと、ない。だって、私には、

 ――『私には』、なんだって?
 ――お前に、何があるというんだ?
 ――名前もなく、存在自体が希薄なお前に、何があるというんだ?

 それは……、
 それは、それは、それは、それは。
 言葉を無駄に重ねる。しかし、答えは出ない。

 ――自身を持たず、自己を持たず、自我を持たない。
 ――そんなお前に、答えがあるとでも思うのか?
 ――答えというものは、存在を確立させた者の特権でしかない。
 ――いるのかいないのか曖昧な存在では、見つけるどころか、あるのかどうかも分からない。

 ああ、その通りだ。
 気がついてこのかた、私には何も無い。
 罪悪感もないままに過ごし、目的も無いままに散策し、意思もないままに振り回され、意図も無いままに殺人を犯そうとして。

 ――しかし、そんなお前にも、一つだけあるものがあるではないか。
 ――気がついてからこのかた、現れては消える、『衝動』が。

 ……白々しい。
 それはお前自身だろうに。

 ――分かっているではないか。
 ――では、自分のやることついても分かっているだろう?

 殺人、のことか。
 なぜ、私は殺すことをしなければならない?

 ――それは、おまえ自身がよく分かってるだろ?

 ……分かってる、って?
 どうなのだろう? 分からないといったほうが正しいだろう。分からない。そんなこといきなり言われても、わかりゃしない。

 ――お前がお前である限り、お前は人を殺す。
 ――そこに、理由なんて無粋なものは入る余地も無い。必要なものはそんなものではないからだ。

 理由が、要らない?
 そんなことが、あるわけが無いだろ。
 何かをするには、必ず理由が必要なはずだ。それが殺人というならなおさら。

 ――くだらないな。
 ――それは、何かに答えを求めているだけではないか。
 ――返っても来ないものを求めて一体何になる?

 お前が何を言っているのか、分からない。
 私は、ただあたりまえのことを聞きたいだけなのに……

 ――当たり前のこと?
 ――お前は。そんなものを欲しいのか?

 欲しい、というわけではない。
 でも、それは大切なもののはずだ。
 生きるうえで、とても大切なもののはずだ。

 ――くだらない。実にくだらない。
 ――当たり前のものなんて幻想をまだ信じているなんて、心底くだらない。

 何が、くだらないんだ?
 御託ばかり並べていないで、さっさと言いたいことを言ったらどうだ?

 ――今まで、当たり前のことなんて、あったか?
 ――お前が意識をもどしてから今まで、お前の言う『当たり前のこと』はあったか?

 そ、れは……。

 ――そろそろ、認めたらどうだ?
 ――もう、人を一人殺した時点でお前は裏の住人だ。
 ――世界の闇の中を歩く存在だ、ということを、認めろ。

 うるさい、うるさい、うるさい!
 だからどうした。
 私は確かに人を殺した。だけど、それでも普通に戻れないわけではない。

 ――普通の生活に戻るのか?
 ――自分が誰かも分からないのに、どうやって生きていく?
 ――まあ、それがうまく言ったとしても、第二、第三の殺人をしないとどうして言い切れる?

 人を殺すこと事態が、イレギュラーなのだ。私の意志ではない。だったら、抑えればいい。

 ――『衝動』を、か?
 ――この『私』を抑えるというのか?
 ――いい加減諦めろ。
 ――そんなことが不可能なくらい、お前は十分分かっているだろう。

 ……確かに、そうだ。
 私は、目覚めてからからずっと『衝動』に振り回されているではないか。

 ――どうせすぐに私とお前は溶け合って一つになる。そうなったら、どの道お前の意思は関係ない。
 ――だいたい、私はお前から生まれたのだぞ? 少なくとも、お前にその可能性があったから、私が生まれたのだ。
 ――いわば、お前と私は一心同体。
 ――同じものを起源とするもの。
 ――結局、おんなじなんだよ。どれだけ言いつくろってもな。だから、お前は私に逆らえない。
 ――なあ、

 そう、そいつはにやりと笑うようにしながら、呼びかけてくる。

 ――素直になれよ。『私』


               ◇◆◇


 壁に縫い付けるように、私のナイフは男の心臓を貫いていた。
「お……あ、あ」
 最後の力を振り絞ってか、彼は手を伸ばしてくる。しかし、すぐに身を引いたので、彼の手は空を裂くだけになった。
「く、は、……あ、ああ」
 何かを、言おうとしている。
 しかし、それに構わず私はもう一撃、彼の喉に向けてナイフを刺す。
 喉仏の横、肉の柔らかい部分に、ずぶりという音を立てつつナイフは刺さる。
 びくり、と男の身体が痙攣したように波打つ。
 気にせず、喉から刃を抜く。――噴出する鮮血。鮮やかな赤色をしたそれは、私を同色に染め上げていった。
「……あ、はは」
 自然と、笑みがこぼれた。
「あは、あはは、はははは」
 乾いた笑い声。
 それを聞くものは、どこにも居ない。
 男は、さすがに力尽きたようでもう動かない。死んだように、というか、実際死んでしまった。
 とうとう、やった。
 私は、意識を保ったまま人を殺した。
 そこに、意図が無いといっても無意味だ。山澤修司の時は、意識がなかったので、もしかしたら自分じゃないかもしれないと言うこともできたが、今回ばかりはいいわけはきかない。なにせ、証人は他ならぬ自分なのだから。
 ひとしきり笑うと、覚めた目で死体を見下ろす。
 何にも感慨は無い。
 それを確認すると、私は死体に背を向けて、部屋の外に出た。


               ※※※


 ビジネスホテル、というよりも、旅館に近いところだった。
 部屋を出た後、さすがにこの血まみれのままでは人目につくので、すぐにトイレに入って着替えをする。着替えは、先ほどの部屋から寝間着のストックを拝借してきた。
 血がべとべととして気持ち悪い。鏡を見ると、髪の毛についた血が固まりかけていてやばいことになっている。人が来る前に、と洗面所で髪を洗う。
 着ていた制服は、仕方がないので細切れに破るようにして便器に流すことにした。ナイフを使ってやれば意外と簡単で、すぐに作業は終了する。
 それから、旅館内を軽く散策。下の解に降りる間に、二人の人間とすれ違ったのでそれぞれ心臓に一刺しずつしておいた。おそらく即死だろう。
 どうやら私が居たのは四階だったらしい。エレベーターを使うまでも無いと思い、私は階段を遣って降りることに。
 階段で騒ぐ子供がいた。きゃんきゃんと声が反響してうるさい。すれ違いざまに、心臓には腕が届かなかったので彼の首筋を切り裂く。
 頚動脈を切られ、血が噴水のように飛ぶ。すでに返り血を食らわないくらいの動作は出来ていた。どこをどう切れば人が死ぬのか分かるのだ。どのように血が飛ぶのかも、不思議と分かった。
 一階。ロビー。窓から見える景色は暗いので、夜だろうか? ロビーももう電気が消してあって、誰も居ないようだ。
 ……いや。
 一人だけ、待合のイスに座っている人物が居た。
 その人物が、私の姿に気がつくと立ち上がって「よう」と手を上げてきた。
「なんだ。早かったな」
「…………」
 知り合い、だろうか?
 いや、関係ないか。知り合いだろうがなんだろうが、関係した人間は全員刺すのだから。
「あれ? お前、バットはどうした。――その手に持ってるナイフを見ると、さすがに使いにくくて捨てたか?」
「…………」
「答えない、か。――さすがに二度続けての殺人は辛かったか? 肉体的には問題ないにしても、精神的には表のお前は慣れていないだろうから」
 端正な顔立ちをした男だった。燕尾服という、普段あまり見ない服を着ているのだが、それが妙にマッチしている。程よい短髪や落ち着いた物腰が、その服を似合わせている。
 そいつは、人を馬鹿にするような笑みをにやりと浮かべる。
「で、どうだ? 今の気分は」
「……どういう意味だ?」
「もう『混同』してしまったんだろ? だったら感じ方も違うんじゃないのか? 表のお前と、裏のお前じゃあまりにも落差があったからな。丁度平均値がとれたらいいかとも思ったが、どうも今の様子を見ていると全然違うみたいだし」
 何を言っているのだろう?
 私は、『私』でしかないのに。
「ふん。まあ、お前に聞いても意味は無いか。そうだな、あとでテレパスにでも見させるほうがよほど効率がよい」
「……アンタ、誰だ?」
 いちいち相手に付き合っているのも面倒くさいので、聞きたいことをとっとと聞く。
 どうやら、こいつは私のことを知っているようだ。では、一体私は誰なのか、知ってるのだろうか?
「ん、小沢から聞いていないのか? おそらくあいつなら誇らしくいうと思うのだがな。覇者だ、とでも」
 ……あー、そういえばそういうこともあったな。
 そうか。こいつか。そんなこっ恥ずかしい名乗りをあげてるのは。
「アンタは、私のことを知ってるのか?」
「知っているといえば、知っているな。少なくとも、今この世に生きている人間のなかでは一番だろう」
「私は、誰なんだ?」
「××××、って言って、そろそろ聞こえるか?」
 ……駄目だ、聞こえない。
 最後まで、私の名前は聞こえない。
「ふん。まだ完成されてはいない、というわけか。まあ、技術的には完成だろうがな。後一歩、といったところかな」
「な、にが、完成、だって?」
 頭痛がする。
 ずきりずきりと、何かで何度も刺されるような痛み。
 突然の痛みに、気を失いそうに無いながら私は前を見続ける。
「何、お前の殺人技術のことだ。さすがに、その『力』を持っていればある程度までいけると思ったが、正直ここまで早く扱えるようになるとは思わなかった」
「『力』?」
「モノの軌跡、が見えただろ?」
 にやり、と顔をゆがめる男。
 軌跡……ナイフの軌道のことだろうか。
「まあ、ここでその能力について言及しても仕方がないがな。それより問題なのは、お前の立ち位置だな。――どうも、完成したはいいが失敗作らしい」
 しかも、とびきり凶悪な、な。
 そう、呆れたような声で男は言う。
 どうも、彼の思惑とは違ったように進んだらしい。
「誰かれ構わず殺すのは歓迎なのだが、それでいて殺害する相手を選んでいるようだな。っはん。なんて矛盾した存在だ」
 ……何を言ってるんだ?
 意味が分からない。
 ――もう、限界だな。
 心の中で呟きつつ、ナイフを前に出す。
 ――付き合うのも面倒くさい。
 ――刺せば全て同じなのだから。
「お? とうとう俺も殺人対象に移項か。こりゃすこし参ったな」
 戯言に付き合う気はない。
 男が何を言っているのか分からないが、そんなことは私の前には関係ないのだ。
 ――だって、私は。
 ――私は、
 ナイフを振るう。
 鋭利な刃は、しかし男の手によって簡単に止められた。
 ……白刃、取りだって?
「ふむ、さすがにすばやいな。B2としては一番だろうな」
「っ!」
 休まず、止められた状態から回し蹴りをする。が、それもすぐに男が距離を置いて空ぶる。
「焦るな。どちらにしろ、俺はまだ死なない。そう、決まっているのだからな」
「……知るか。私はアンタを殺したいだけだ」
「――うーん、勝算の無い勝負はすぐにやめると思ったのだが、早計だったか。それとも、薄々俺に対して特別な殺意を抱いているのか?」
「なんの、ことだ」
「ん。ああ、俺はお前の家族を殺しているからな。それを精神の奥底で理解しているのではないか、とでも思ったのだ」
 そういったことを事も無げに言い放つ男。
 私の、家族……。
 名前すら、すでに思い出せない。
「お前という機械を手に入れるには、やはり邪魔だったのでな。親戚関係が希薄だったのは助かった。もしかしたら親戚ともども殺戮しなければならなかったからな」
「……罪悪感とかは、無いのか?」
「ふん、それをお前が言うのか?」馬鹿にするように男は言う。「罪悪感なんてもの、持っていないのはお前も同じだろうが。それに、俺は目的のために殺人を行った。罪悪感なんて感じるだけ卑しい」
 罪悪感、は確かに無い。
 考えてみたら、そんなことを問うこと事態馬鹿馬鹿しい。こちらの世界で、そんなことに気を取られてる人間なんていないだろう。
「ふふ、まあいい」
 そう言って、彼は私に背を向ける。
「何をしている。背中を向けて、どうなっても知らないぞ」
「やれるものならやってみろ。少なくとも、ここで俺を殺せたら誉めてやるよ。運命の奴やつがな」
「どういう、意味だ?」
「まんまだ。まあ、お前は運命に対抗するための駒の一つだから、最終的にはそれくらいのことはしてもらわなければいけないんだが、今のお前じゃ無理だ。――少しでも人間らしいところが残っているうちじゃ、意味がない。運命どころか、あの赤衣にすら相手にされん」
 首だけをこちらに向けて、男はにやりと笑う。
「全てを亡くせ。自身の感情も意地も意図も意見も心もなにもかも。無くすのではなく亡くせ。無くしたものは探せるが、亡くなったものは探す以前に存在しないからな」
「…………」
「じゃあ、な。せいぜい大いに暴れろ。混乱させろ。世の中を混沌の渦に叩き込む手助けをしろ。それが俺のためになるんだからな」
 そう言い捨てると、彼は手を振り暗闇の外に出て行った。
 追いかける気は、すでにない。
 追いかけてどうすることもできないし、何をすればいいのかも分からない。
 ただ、今の私は立ち尽くすことしか出来ない。
 ――私は、何もかもを捨てるべきなのか。
 何もかもを捨てたら、どうなるのだろうか?
 ――何もない、空っぽの存在。
 ――大切なものも忘れ、譲れないものも持たず、叶えたい思いも知らない。
 そんなもの、人間ではないじゃないか。
 ――そう、その通りだ。人間ではない。
 では、私は一体なんなのか。
 ――そんなの、決まっている。
「お客様?」
 声をかけられた。
 振り返ると、そこには従業員らしい人が立っている。心配になって声をかけたのだろうか?
 ――でも、そんなの関係ない。
 今の私には、相手が誰かなんてまったく関係ない。
 ――だって、私は
 そう、私は――

 ――殺人機なのだから。

 私はナイフを振るった。


               ※※※


 あれから、どれだけの時間が経ったのだろうか?
 一日? 一週間? 一ヶ月? 一年? あれ? そもそも私は生きてたっけ?
 今では、何も考える気が起きない。最低限の判断能力だけを残して、私の意識はすでに磨耗しきっている。
 今までに何人殺したのか分からない。その成果で、今では私は舞う地を脅かす殺人鬼として有名な存在となった。
 これが、あの覇者だとか言う男にとって利益になるのかは正直疑問だが、別に構わないだろう。私が何をしようと、彼はつまらなそうに笑うだけだ。
 だから私は何度も殺す。
 強いものも、弱いものも、逃げるものも、立ち向かうものも、男も、女も、子供も、老人も。
 それが、私だから――

 唯一の、存在理由だから。

 ある日、私の前に、赤いマントを羽織った少年が立ちはだかった。
 地のように真っ赤なマントを羽織り、手には漆黒の傘。
「あ、は」
 とうとう、来た。
 私の、最後の目的。
 それを満たすことで、私はやっと、純粋な『殺人機』へとなることが出来る。
 その赤マントは、私を悲しげに見つめている。
 しかし、そんなことは関係ない。
「いく、よ」
 完成させるために、
 また私は、その腕を振るう。
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プロフィール

西織

Author:西織
この欄を編集するのを完全に忘れていた男。今年の四月に新社会人という名の社畜人生に一歩を踏み出した。



性別:男
年齢:22歳
血液型:A型
趣味:読書&執筆
将来の夢:作家(前途多難)

本の感想などを見たい人は、こちらをどうぞ
『空っぽの知識(読書日記)』
http://emptyreader.blog81.fc2.com/

自作小説専門のブログ作りました。
『空っぽの知識(自作小説)』
http://emptynovel.blog83.fc2.com/

同じFC2ブログを三つも作ったことにより、他のブローカーに訪問者履歴的な意味で迷惑が……あの、本当に申し訳ございません。


何か連絡があれば、こちらにお願いします。
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