空っぽの知識
 かたよりまくった読書くんの日記
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『ソロモンの偽証』 著/宮部みゆき 感想




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Amazon 『ソロモンの偽証』





 「どうして、悪い奴がやってる本当の悪いことをこつこつ集めて、立証して、正面から戦わなかったのよ。どうして嘘に頼っちゃったのよ」
 (中略)
 「わたしは、それが、悔しいのよ!」

 ソロモンの偽証6 書きおろし中編『負の方程式』より



 時が立つのは早いですね。はい、いつのまにやら二週間以上経過していましたが、今日も元気に更新です。


 今日紹介するのはこちら。

 宮部みゆきさんの『ソロモンの偽証』
 最近映画化もされ、名前だけは聞いたこともあるんじゃないかと思う今作。単行本のほうが図書館で予約が外れ始めていたので、なら読んでみるかと手にとって見たが最後。あまりにも面白く、最終巻に至っては文庫版を購入していました。

 一冊のページ数はなんと脅威の一千ページ。それが三冊分(文庫版は五百ページが六冊)もあるというのに、その膨大な量を感じさせない、それどころか次々に起こる事件や人間模様に圧倒させられ、とにかく魅入らせられて、いつのまにやらページを捲る手が止まらなくなった。


 というわけで、まずはネタバレ無しの感想を



 始まりは、とある中学生の自殺から始まり、様々な事件が二次的、三次的に起こっていく様子は、フィクション仕立てでありながらもどこかリアリティがあり、誰もが一度は覚えたことのある「社会の恐ろしさ」を誤魔化さずにまっすぐに描いている。淡々と描いていながら、しかしそれは事象の羅列にとどまっておらず、しっかりと一つ一つが意味を持っている。そこには血の通った人間がいて、人生があって、事件に対して憤懣をいだき、悲哀を感じている。そんな丁寧さが、この作品の魅力であると思う。


 第一部は、とにかく事件、事件の連続。本来ならばただの自殺で終わるはずだったの事件が、一人の生徒の告発文に寄って様相を様変わりさせる。二次被害、三次被害と事件は拡大し、その場その場における人々の思惑や姦計、あるいはちょっとした人間関係のこじれによって、更にことが大きくなる。その中で、当事者となる中学生たちは、ただ自体に翻弄されることしか出来ない。

 第二部では、その翻弄され続けた中学生が、反旗を翻す。一人の少女を筆頭に、事態の究明を測るために、冤罪にかけられた不良少年に対して、私的裁判を行うというこの発想が、とにかく面白い。高校生ほど自由で大人でもなく、かと言って子供でもなく強い自我を持つ彼らが、持てる手をつくして事件を追い始める。自殺だと誰もが思っていた最初の事件。しかし、その不明な点には、一体何が隠されているのか。

 第三部は、ついに解決編。第一部と第二部で積み重ねてきた伏線を、法廷という場で次々と披露していく様子は、圧巻の一言。検事も弁護士も、中学生でありながら、中学生離れした分析力と口弁で、関係する証人たちと相対していくさまは爽快そのもの。しかし、ふとした瞬間に中学生らしい甘さや嫉妬心が現れる所もまたうまい。一定のリアリティを守りながらも、フィクションとしての面白さを損なわないバランスの良さがとにかく小気味良かった。
 そして、最後に明かされる事実には、ここまで長い物語に付き合ってきたからこその衝撃と納得が待っている。まさに、計算しつくされたエンターテイメントで、さすがはベテラン作家であると、読み終わった後はただただ脱力するだけだった。


 宮部みゆきさんは、社会派推理小説の代表となる作家だけれども、この一作をとってもその理由をこれでもかとつきつけられたように思う。視点となる個々人のキャラクターから、社会の理不尽を感じ、窮屈さを覚えながらも、それにあがくキャラクターの姿に爽快感を覚える。
 中学生たちが行なった私的裁判は、言ってしまえば出来レースであるが、その提案者である藤野涼子は、思惑と外れて検事となって、事実と偽証の間で葛藤を抱くことになる。しかし、証人たちの事実を追求していき、互いに傷つけあいながらも、最終的に得た結論は、彼女にとっては勝利であり、そしてそれは、中学生の課外活動という一瞬の出来事ではあるとはいえ、社会の欺瞞に対して勝利したといえると思う。

 そして、文庫版において書き下ろされた『負の方程式』
 ここでも描かれるのは、偽証の事件。
 あえてこれを書きおろして文庫に収録した理由は、言葉にせずとも読み終われば理解できるだろう。現実に立ち向かうために、どうしても事実よりも虚実の方が効果的なことがある。しかし、虚実を用いた時点で、それは正しくはないのだ。
 正しさを追うことは何よりも難しく、結果を残せないこともある。しかし、偽証では、例え結果を得られたとしても自分に誇ることは出来ない。

 人生は長く、その中には真実や正直がバカを見るような欺瞞がいくつも転がっている。そんな現実の中、欺瞞に立ち向かうという真っ直ぐすぎる小説は、とにかく気持ちのいい作品だったと思う。



 そんな感じで、とにかくよいエンターテイメントを見せてもらったなと思いました。



 あと、ネタバレ有りの感想も書きたいので、続きから。












 涼子ちゃんファザコン可愛い。

 これが言いたかった。さんざん真面目なことを上で語っていたけれども、要するにこの作品で一番ドツボにはまったのがこの子ですわ。もうスペックだけ見ればパーフェクト中学生で、こんな中学生いねぇよってくらいなんだけれど、この子が時折見せる歳相応の気難しさとか嫉妬心が現れるシーンがもうたまらん。
 痴漢に対して怯えながらも気丈な態度でクラスメイトの野田健一に助けを求めるところとか、ほんと最高だった。あそこの健一もまたかっこいいんだけれど、もう殺伐とした作中の空気の中であそこはすごくボーイミーツガールで身悶えたわ。あと、父親の前では対等な感じで話しながらも、どこか頼りにしているところとかマジ最高。ほんとファザコン可愛い。


 あー、えっと。あとは、事件の真相の方。
 とどのつまり、柏木卓也という少年の本質を掘り下げていくのがこの裁判の主題だったわけだけれど、結局は大人になりきれなかった中二病が、嫉妬心に暴走しちゃったっていう印象。ただ、中二病というには理知的すぎて、けれど聡明にまでは至れなかったというところが柏木卓也の不幸で、彼も思春期を越えさえすれば、こんな馬鹿なことはしなかったんじゃないかと思う。
 柏木卓也にとっては世界が少し広く見えるだけの見識があったわけだけれど、それにたいして自分のちっぽけさに折り合いをつけるだけの精神を持っていなかった。だから、特別な経験をした神原和彦という少年に、特別を求めた。思いあがりも甚だしいというか、とにかくそういうところで、彼はとことんまで子供だったんだなぁと思う。

 敗訴した検事側が一体感とともに終わったのに対して、弁護側が分裂して気まずい空気だったのは正直笑えたんだけれど、全員がちゃんと自分に折り合いをつけて終わったところは、自殺した柏木卓也よりもはるかに大人だったと思う。


 というわけで、感想でした。

 宮部みゆき、中学時代に少し読んでいたのだけれど、当時は難しくてあんまり楽しめなかったこともあるし、これからどんどん読んでいこうと思う


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Author:西織
この欄を編集するのを完全に忘れていた男。今年の四月に新社会人という名の社畜人生に一歩を踏み出した。



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将来の夢:作家(前途多難)

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