空っぽの知識
 かたよりまくった読書くんの日記
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『K・Nの悲劇』の感想
K・Nの悲劇 (講談社文庫)K・Nの悲劇 (講談社文庫)
(2006/02/16)
高野 和明

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 ●粗筋

 若くして成功した夫との新しい生活。だが、予期せぬ妊娠に、中絶という答えを出したときから、夏樹果波の心に異変が起こり始める。自分の中に棲みついた別の女――精神の病か、それとも死霊の憑依なのか。治療を開始した夫と精神科医の前には、想像を絶する自体が待ち受けていた。
 乱歩賞作家が描く、愛と戦慄の物語。





 胸に突き刺さるような、とても鋭い物語です。
 読んでいる間、なんだか説教をされているような気分でした。でも、考えを押さえつけられるような説教ではなく、諭されるような感じのものです。自分の今までの考え方がいかに甘いのかがよく分かりました。


 人工妊娠中絶を中心に、女性の母親になるという強い母性を描いた作品。自分の子供が欲しい、という気持ちは、男の僕も分からないわけじゃないですが、この憑依した久美という女性と、そして果波の無意識の意思の前ではその気持ち大きさに圧倒されてしまいます。
 そして、その必死な姿を見て、親になるということがどんなに大変で、またどんなに大きなことなのかが、ぐさりぐさりと胸に突き刺さるように伝わってきました。

 子供を産むのには、お金がかかります。そのことは知識としては知っていても、僕自身どれくらいの金額がかかるのか、詳しいことまでは知りませんでした。
 なので、経験者である両親に聞いてみると、出産費用だけで約三十万円くらいかかるそうです。約三十万……って、今のうちの両親の給料くらいあるじゃないですか……。
 もちろん、それだけでは終わりません。出産をした後にもいろいろと買い揃えたりしなければなりませんし、とことんお金はかかってきます。しかもその状態が、子どもがいる以上ずっと続くのです。うちの親が毎月通帳を見て頭を抱えているのを見ているのでそれはよくわかります。っていうか、いつか自分もこうなるのかと思うと、そこはかとない不安が胸に重たくのしかかってくる……。


 と、上のような事実があるのですが、実際これを数字的な問題で現実的に意識して子作りしている人間がどれだけいるでしょうか。

 本書の中から紹介すると、日本で一年間に妊娠をする人間は百五十万人いますが、そのうち人工妊娠中絶を行う人間は三十四万人にもなるそうです。
 百五十万人中、三十四万人。――つまり、妊婦の四人から五人に一人が、中絶を行うということ。このことを作中で磯貝という医者が、「中絶胎児が人間として認められれば、日本人の死亡率トップはガンではなく、人工妊娠中絶ということになります」と揶揄していました。
 性観念に疎いというよりもルーズな日本ならではの数字かもしれませんが、しかしこれは酷いと思います。如何に、日本人がただ一度の快楽のために馬鹿なことをやっているのかがわかります(これはギャグでなく、です)

 そりゃあ、僕だって男ですから性行為に対して欲求がないわけじゃないですが、最低限の注意ぐらいはするべきだと。……しかし、性教育を受けた人間なら、こんな迂闊なことはしないと思うんですが。



 まあ、だからこそ、経済的に自立できないままで子どもを作るなんてことをすると、この本の主人公、修平みたいになっちゃうぞ、と。

 いや、マジで他人事でも笑い事でもないんですけどね。将来自分もぶち当たるかもしれない問題ですし。






 読み終わっての全体の感想としては、人間の醜いところもリアルに出しつつ、救いのあるようなきれいな話だったな、という感じです。
 終わりよければ全てよし、という感じも受けるかもしれませんが、僕としてはまったく問題ありません。っていうか、この物語でアンハッピーエンドをやられたら、僕はへこんで立ち直れなかったかも。

 作中キャラで一番好きなのは、精神科医の磯貝祐次。責任感の強いその姿が、とても魅力的でした。一生懸命だしね。
 あと、一番苦手なのは中村久美。憑依した人格なので、実際は果波の作り出した人格とはいえ、あの憎しみの生々しさにはえぐられるような苦しさがあります。つーか、子どもに対して慈愛の笑みを浮かべている姿すら怖かったです。





 まだ読んだばっかりなんで、なんかいろいろと整理ついてないのですが、ここまで勢いにまかせて書いてきました。この気持ちはなんか文章に表しておかねば、と思ったのですが、結構すっきりしたかも。
 とにかく、いい話でした。っていうか、いい教訓です。
 ……そうですね。一番読後の気持ちを表すのに、いいセリフが、恋愛についての本を書くとして、どんな構想をするか時かれたとき、主人公の夏樹修平のこのセリフです。

 「避妊をしなければ子供ができる。そんなことも分からない奴等は、恋愛をするな。膣外射精は避妊ではない。子供が出来たら責任をとれ。畜生以下の存在に成り下がるな」

 なんかこの本で食らうパンチを一転にまとめたようなものです。まあ、実際彼自身が体験したことですしね。


 まあ、そんなこんなで悲しくも明るい、面白い物語でした。
 ちなみに、ここまで書いてきたことを振り返って、「自分、なんか子供を産むことに関することしか書いてないな」と思ってしまったので補足しておくと、この本、サスペンス自体かなり面白いです。お勧めお勧め。



 「お前の言う通りだ。俺はこの手で、何人もの赤ん坊を始末してきた。なぜだと思う? 無責任な親たちが、社会が、子供を殺すことを望んだからだ!」 (by磯貝祐次)

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コメント

こんにちは。同じ本の感想記事を
トラックバックさせていただきました。
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お気軽にどうぞ。
[2010/07/31 13:40] URL | 藍色 #- [ 編集 ]


うわあ、また懐かしい記事を……。
ではトラックバックしますね。
[2010/07/31 18:38] URL | 西織 #fBhJEaUc [ 編集 ]


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