空っぽの知識
 かたよりまくった読書くんの日記
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『吐きたいほど愛してる』感想
吐きたいほど愛してる。 (新潮文庫 し 58-1)吐きたいほど愛してる。 (新潮文庫 し 58-1)
(2007/07)
新堂 冬樹

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 友達から借りて読了。
 凄惨です。最高レベルにグロテスク。
 僕は本は濫読していますから、もちろんそういうグロシーンやエロシーンにも何度もぶち当たっているのである程度の耐性はあると思っているのですが、これはちょっと苦しかったです。
 あまりにも緻密な描写と、直接的な表現。
 ごまかすどころか前面に押しだしているのが、魅力ではあるんですけどね。忠告しておくと、合わない人には絶対に合いません。あと、食事中や食後まもなくに読むのも止めておいたほうがいいです。吐きそうになりますから。(実際僕は弁当を吐きそうに……)

 暗黒系純愛小説といわれるくらいあって、ホントに黒い話ばかりが短編で四つ続きます。そのどれもが純愛をテーマに添え、それでいてその愛は、どこか狂気を孕んでいる。

○半蔵の黒子
 主人公、毒島半蔵は、自分に対し絶対の自信と自尊の気持ちを持っている。実際のところは正反対の容姿・性格の彼は、その思い込みの激しさから、常に周りに忌避されていた。
 そんな彼は、学生時代の初恋をいつまでも引きずっている。異常なほど自尊心が高いため、女に言い寄れば断るはずはないと思っているので、あいてが断った理由についても自分が悪いのだとまったく思わない。
 そんな彼の狂った一途な心情は、最終的にひどい惨劇を招く。

 正直に気持ち悪かった話。やばいですよこれ。物理的にも感覚的にも。主人公のナルシストぶりも、ここまで徹底されるとこっけいに映ります。
 少しずつ半蔵が異常であるということが明かされていく書き方には素直にすごいと思いました。そして最後の疾走感が、奈落の底に落ちていくようで……。


○お鈴が来る
 妻が妊娠中に、浮気をしてしまった『私』。
 会社の若い女性の強引さに流されるままの一時の気の迷いであったと自分の中で言い訳をし、二度と同じ過ちを繰り返すまいと妻にも黙っているつもりだったが、妻は浮気のことに気づいていた。
 それから、妻の精神に異常が出始める。
 通常の思考から離れた奇怪な行動。支離滅裂な、噛み合わない会話。そして、いるはずの無い日本人形におびえる姿。
 彼女がそうなってしまったのは自分の所為だと思い始めは耐えていた『私』だったが、最後には命の危険を感じまでに。そして、惨劇が。

 妻の狂気が、リアルでした。見ていて苦しいし、痛々しかった。
 『私』のほうが全面的に悪いとは言え、見ていてかわいそうになりましたね。確かに妻がこんなことになったら逃げたくもなるわ。
 「お鈴が来る、お鈴が来る」ってのが、実際な聞いてもいないのに頭の中で反響してやりやがりますよ。
 しかし、最後のどんでん返しがこの話はすごいです。あまりにも見事で爽快な気分になるのですが、なんだか全体的に鬱に落とされるというこの感情……


○まゆかの恋慕
 『僕』はある日自分の車のそばでうずくまっている女性を見つける。どうやら交通事故にあったらしく、足に大怪我を負っていた。
 すぐに自分の部屋に連れていき、簡単な応急処置をする。そのあとで病院に行こうというが、彼女・まゆかは絶対に嫌だと拒否する。
 家族に連絡させようとするも、それも拒否され、仕方なく同居のような形でまゆかを自分の家に置くことに。その生活の中で、二人は次第に惹かれてく。
 しかし、その幸せな生活はある日、一つのニュースによって一気に崩壊し、惨劇に変わってしまう……

 今回の四つの話の中で、どちらかと言えば黒さが薄いと思われる話。といっても、まゆかはヤンデレの気ありですけどね。
 まゆかの境遇は、マンガや小説なんかでも結構ありがちですが、それでも感情移入できたのは、描写の力なんでしょうね。とにかく二人が可哀想でした。
 ただ、考えてみたら最後の『僕』は巻き添えじゃん……。


○英吉の部屋
 老いた英吉は、寝たきりの生活を送っている。その中で、毎日娘夫婦の虐待に耐えていた。
 昔は、素直な娘だったと英吉は過去を回想する。自分のやってきた、後ろ暗い過去や、成功のこと。娘への愛と、妻への愛。そして、その愛が故の数々の行動。
 それらは実際は妻と娘の苦しみしか招いていないのだが、そのことに英吉は気づかない。気づかないふりをしているのか、はたまた本当に気づいていないのかは分からないが、とにかく彼は終始自分のやったことは正しいと信じていた。
 だからこそ英吉は、寝たきりなのをいいことに自分に度重なる苦痛を与えてきた娘を、愛の無知という名の傲慢さで打つ。

 一番描写が過激だった話。
 虐待シーンなんかは物凄いです。始めは本当に英吉に同情しましたもの。
 でも、英吉の回想が終わったらそんな気持ちは消えうせてたけどね。
 この人の愛が、四つの話の中では一番ずれていると思います。自分勝手な愛という面では半蔵とも通じますが、英吉の場合はその愛がすべて相手のためになっていると思っているから余計にたちが悪い。
 っていうかね、そりゃあ娘も虐待したくなるよ。僕だったらたぶん殺す。
 最後の一文で、結局自己保身じゃねーかよ、って気分になりましたしね。なにより、自分勝手な愛ほど危険なものはないということです。



 一番好きなのは、『お鈴が来る』です。あの恐怖はすごいですよ。最後の喪失感もかなりきましたし。正直、一番ショック受けた。
 新堂冬樹は、初めて読んだのがメフィスト賞受賞作の『血塗られた神話』だったので、こういう作風のものを書かれてもあんまり違和感内のですが、もし『忘れ雪』とかいう純愛系の小説を読んでからから来た人がいたらきつかっただろうなぁ。
 僕自身は、『忘れ雪』などの純愛三部作はまだ呼んでいないので、この機会にでも読もうかと思い始めた次第です。


 最後に。思いっきり鬱になりたい人におすすめですよ~。


 「お、お鈴」 (by『私』/お鈴が来る)
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コメント

こんにちは、私は高1です
友達が貸してくれてこの本読んだんですけどすごく汚かったです笑
他の人がこの本を読んでどう感じたのか知りたかったので参考になりました。
こういう本は人間の烏滸がましい本性の危うさが再認識できて面白いですよね〜
[2015/12/11 16:40] URL | みほ #- [ 編集 ]


はじめまして。
この感想は、私が丁度高校一年生の時に書いたものなので、今見ると恥ずかしい限りですが、あなたと似たような感性で読めた頃のものじゃないかなと思います
何分読んだのが八年も前なのでほとんど内容を忘れてしまっていますが(はっきり覚えているのが英吉の部屋だけ)、今読んだらどんな感想を抱くか気になりますので、再読してみようと思います
[2015/12/14 03:08] URL | 西織 #fBhJEaUc [ 編集 ]


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