空っぽの知識
 かたよりまくった読書くんの日記
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『不気味で素朴な囲われたきみとぼくの壊れた世界』 感想

不気味で素朴な囲われたきみとぼくの壊れた世界 (講談社ノベルス ニJ- 23)不気味で素朴な囲われたきみとぼくの壊れた世界 (講談社ノベルス ニJ- 23)
(2008/12)
西尾 維新

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 見つけて即購入。
 ポイントカードがうまく溜まっていたおかげで、ぎりぎり買えました……。


 塾に行く前に一時間と、帰りの電車、そして帰宅して後始末もせず強行軍で読みました。
 本当は一日くらい置いて書くべきなのかもしれませんが、きみぼく系はどうも今まで感想書けないことが多かったので、時間があるうちに書いておきます。




 さて。




 うん。すごかった。

 なんか西尾さんの本読むとき、きみぼくシリーズだけは『面白い』よりも先に『すごい』ってのがくるんですよね。なんか西尾ファンの中じゃきみぼくシリーズは一巻で終わっている扱いですが、僕的には一番初めに触れたものであることもあって、全体的にかなり好きです。
 っていうか、散々な言われようですけど、ぶっちゃけ完成度かなり高いと思うんですよこのシリーズ。ミステリーとしてみたらどうかといわれたら困りますけど、でもおとなしくミステリの枠組みに収まっているわけじゃなく、その中から少しずれたことをやろうとしている。そういうところ、僕のような人間にはかなりツボです。

 特に、今回は掛け合い成分が低い分淡白な情景が全体の雰囲気としてにじみ出ていたので、『大人側』から見た学校というイメージとかなりあう気がします。




 まあ、そんなこんなで。

 串中弔士。二十七歳。倫理教師。

 いや、マジでなんであんたが倫理教師やってんだよ、って話ですが。


 作中でもやっぱり、病院坂先生から全力で突っ込まれていましたが、それはもう全読者が思うところでしょう。少なくとも、ぶきそぼのころにやらかしたことや吐いたセリフを考えると、これ以上間違った職業選択はないし、これ以上的を射た職業選択はないと思います。(言峰が神父やるのと同じ感覚ですねこれ)


 あと、注目するのは今回の病院坂さん。いや、これ名前言っちゃっていいかな……。最近ネタバレ配慮を考え始めた身としてはあんま言いにくい部類ですが。
 ちょっと皮肉ったような語り口は、これまでのきみぼくシリーズの語り部というよりも、どちらかといえばいーちゃんを少し弱くした感じに近い感じがします。今の西尾さんがいーちゃんを書こうとしたらこんな感じになるだろうな、というような。ただ、ちょっとだけ物足りない気がするのは、やはり病院坂先生は本家とは違って凡庸だって言う証拠でしょうか。
 まあ、なんです。バックアップって結局なんなんだろう。



 そんな二人の、きみとぼくの探偵物語。

 ただ、視点は教師視点。



 西尾さんはいつも少年少女を主人公がすることが多いので、今回はかなり新鮮でした。っていうか、こんなのも書けたんですね西尾さん、って感じです。ホントこの人は、そつなくいろんな物語を書くよな……。


 なにより良かったのは、これは大人視点だからこそ出来る物語だった、というところですよね。
 学生を見ようとしない病院坂先生だったからこそ陥った罠。
 そして、思い通りには行かない世界。


 叙述トリックとかミステリ方面でも結構面白かったですが、何よりこの物語の肝はここ。串中弔士の成長と停止。

 十四年前のぶきそぼでの出来事。そのときのラストでの弔士くんは、ある意味でかなり輝いていたと思います。確かに、いろいろなことが重なり少なからずブルーにはなっていましたが、しかしそれ以上に未来への期待がありました。やりたいこと、人にやらせたいこと。そんなことを考えながら、最後にボソリと呟くあの一言の破壊力。それは、中学生にして異質な精神を持ってしまったがための恐ろしさ。

 でも、彼も人の子。
 どんなに異質でも、十四年前は子供でしかなかった。

 今回のラストでアンニュイな感じで語る彼の一人称は、正直見ていて切なくなりました。
 将来(さき)も限界(そこ)も見えてしまったことへの無常感。実際に体験したことがなくとも、それは誰でも想像できるものだと思います。
 特に串中弔士のような、自分では何もしないのに何でも出来るような、自分では何にも出来ないのに何でも出来てしまうような彼は、それを知ったときのむなしさはどれほどだっただろうか。
 彼の語り口が、もう少年ではなく大人になってしまったのだということを強調しているようで、言いようのない不安に近い気持ちを覚えました。
 なんていうか、ぶきそぼのラストの最悪な気分に比べて、この虚しさ。こうして串中弔士の物語は終わったんだな、と思うと、これが人生の一つの決着なのか、と思うと、もう現実的過ぎてつらいですね。



 そういえば、前から思っていたんですけど、串中弔士って、戯言シリーズの西東天と似ていると思うんですよね。
 そりゃあ、口調とか性格とかは結構違うんですが、『最悪』なところとか、感覚的に似てるんじゃないかな、と思っていまして。

 それがここにきて一致しました。

 結局、どう頑張っても自分の予想以上を越えることのない串中弔士。そのとき彼が感じた絶望は、戯言において、想影真心によってもたらされた世界の終わりに西東天が抱いた感情と同種ではないでしょうか?



 まあ、そんなこんなでまじめな話はここまで。





 最後にテンションを上げて突っ込みを。




 くそ、騙されたよ!

 た、確かにぺったんこだけどさ! ひんぬーだけどさ! しかし視覚的にその判断はむず……。
 いや、でも考えてみたら木々先生と通上先生の件ですでにそういうことが起こりうるって言うのは考慮に入れておくべきだったんですよね……。

 ってか、いちもん目のイラストで、ドーナッツ食ってる病院坂先生可愛すぎでしょ! これ詐欺でしょ! つーかなんでポニテ! ポニテ!?


 うわぁ、まさかの伽島刑事登場! ふや子さんの件ではご愁傷様に……。
 もう少し活躍して欲しかったものだけど、はてさて。再登場の余地はないだろうなぁ。(考えられる手とすると、病院坂に対していろいろ言っていたから過去に黒猫とあっているとかかな)


 ……つーか、ろり先輩!
 うわ、マジで落としたのかよ弔士! あの嘘吐きマシーンを! 嘘しか言わないあの女を! しかもベタぼれじゃねぇかよ!
 僅か一ページの登場シーンでこれほどテンションを上げさせてくれるとは……。くそ、彼女との大恋愛とやらの話も見たいぜ。

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コメント

はじめまして。読後感が微妙だったので人の感想を読みたくなり、読ませていただきました。
いろいろと参考になりました。最後のテンション上げた突っこみが楽しかったです。
西尾さんの他の作品と比べてみる観点は自分にはなかったので興味深かったです。
それにしても、やっぱり視覚による思い込みは文章読んでいても影響されますね。
西尾さんにしてはキャラ立ちしたキャラクターが少なくて変な感じの作品でした。
それでは失礼します。
[2008/12/08 19:38] URL | bb #- [ 編集 ]


今回の話は、あくまで『大人』の視点だったからこそ、キャラ立ちは抑えたんじゃないかなぁと思います。実際、もしこの話でテンションの高い会話とかされたら、せっかくの雰囲気がぶち壊しになると思いますし。(ただ、その分掛け合いを期待した人は拍子抜けかもしれないですが)
そ¥れに、おかげで最後の串中弔士の独白の無常観が際立ったのではないでしょうか。


他の作品と比較するのは、結構面白いです。特に西尾さんの場合、微妙なところで共通点があるキャラクターが多いので。
[2008/12/09 01:07] URL | 西織白夜 #fBhJEaUc [ 編集 ]


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Author:西織
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将来の夢:作家(前途多難)

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