空っぽの知識
 かたよりまくった読書くんの日記
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料理の基本は黒煙
 ほとんどやけくそぎみに小説アップ。

 本当は別のをアップしたかったのだけど、諸事情により陽君シリーズ第二弾。『料理の基本は黒煙』

 ほとんど暇つぶしで書いた一作。つーか、陽君シリーズ自体暇つぶしの結晶です。

 では、続きからどうぞ。



 料理の基本は黒煙


「お料理がしたいの」
「……はあ。それで?」
 身を乗り出しつつ言う楓に、俺は少したじろぎつつ聞き返す。
「陽君に食べて欲しいの」
「何でまたいきなり?」
「だって、……この間、小鳥ちゃんが来たじゃない?」
「ああ、一週間前な」
 一週間前、俺のバイトの給料があと三日で入るというときの話である。
俺の財布の中身が完全に尽きた。
ついでに言うと、家にある食物類は全てとある事情により食い尽くしており、実質的に食べるものが一つもなかったのである。
「しっかし、あの時はお前まで家に来て困ったぞ?」
「う、……まぁ、それは」
 少しは申し訳ないと思っているのか、楓は目を伏せる。
 俺の生命に関わる危機的状況のその時、家の最後の食物類であるカップラーメンを食いやがったのは他でもない楓であったりする。女を殴りたいと思ったのはあのときが生まれて初めてだった。
 結局、前の日からまともに食事を取っていない状況で一日目も絶食することになった。しかし問題は二日目。肉体労働であるバイトから帰って来て、さすがに死ぬかもと思った。
そんな時、俺を救ってくれたのは、受験で上京してきた我が尊敬すべき妹、白城小鳥であった。
 俺は小鳥がやってきたときのことを思い出す。
「やあ、約束どおりにやってきたぞ、陽兄。……って、何をしているのだ?」
 ぐったりとしてコタツの上に突っ伏していた俺に、小鳥は呆れながら聞いてきた。
「……絶食ダイエット」
「ダイエットって、陽兄は確か体重が減りすぎて困っていたのでは? それとも何か? 金が尽きて、食べることもできないのか?」
「…………」
 大当たり。
「まったく、一人暮らしは栄養バランスを考えるのが重要だと、あれほど母さんから言われていたではないか。それがこの体たらくとは」
「返す言葉がありません」
「まったく、本棚の裏にはこんなものがたくさんあるというのに、食費をなくすなんてどういうことだ? 本末転倒とはこのことだぞ。陽兄」
「って、テメエはどこを見てんだよ!」
 さり気に男のロマンを一発で見つける小鳥。
 お、恐ろしい子……。
「ん、冷蔵庫の中身も空ではないか。見事に何もない。これで一体どうするつもりだったんだ?」
 いつのまにか、小鳥は何事もなかったかのように冷蔵庫のほうに移動している。
 彼女の質問に対し、俺はまたうなだれながら答える。
「絶食ダイエット~。お~!」
「…………はぁ。仕方がないなぁ。本当は土産を買おうと思っていたのだが、……まぁ、少し余分に持ってきたからいいか」
 そういいつつ財布の中身を確認する小鳥。
 そして、台所を少し漁った後、外に出て行った。
 二十分ほどして、帰ってくる。
「今からちょっとしたものを作るから、待っていてくれ」
「って、作ってくれるの?」
「そうだが、悪いか?」
「い、いやいやいや。滅相もないです」
 俺に断る理由はまったくなかった。喜んで肯定する。
 かくして、給料が出るまでの二日間、俺は彼女のおかげで耐え抜くことができた。
 以上、回想終了。
「いやあ、でもホント、丁度受験の時期でよかったよ」
「妹さん、綺麗だったね」
「ああ、ただ、あの男言葉だけはちょっとな」
「でも、そこも可愛かったなぁ。思わず食べちゃいたかった」
「……そこ、変な想像は止めろ」
 お前にそっち系の設定はなかったはずだぞ。楓……。
 いつからかよく分からないが、小鳥は男言葉で話すようになってしまった。まぁ、あれはあれで一部の人間のつぼにはまるらしく、それで彼女は男にもててたりする。
「しかも、料理も上手だったし」
「あれは俺もビックリした。ったく、いつの間にあんな技術つけたんだか」
 少なくとも、俺が実家にいた頃は包丁も持ったことがなかったはずである。それを、二年ちょっとでここまで上手になろうとは。いやはや。女とは怖いものである。
 ちなみに、楓は楓で今月ピンチだったらしく、ちゃっかり一緒にご飯を食べてに来やがってた。なので、一緒に小鳥の料理を堪能している。
「で、ちょっとだけジェラシー感じちゃったわけよ」
「はあ。お前にもそんな感情があったわけな」
「ん? どういう意味?」
「いや、なんでもねぇ」
 楓の不思議そうな目から無理やり視線をはずす。どうも、こいつの目は苦手だ。なんだか見透かされているような気がするから。
「で、話を始めに戻すけど、具体的に何をしたいんだ?」
「とりあえず、台所を貸して」
「……ほんとにやるのか?」
 楓とは付き合いだして四ヶ月くらいになるが、料理をするってのは一度も聞いたことはない。昼食も、もっぱら大学の食堂だ。そんな彼女に料理ができるとは思えない。
「駄目?」
「いや……駄目って言うわけじゃないけど」
「じゃあ、何なの?」
「う、い、や……その」
 楓の純粋な瞳が俺を見つめてくる。ぐ、辛い……。そんな瞳で俺を見ないでくれ。って、何で涙目になってる? く、くそ。可愛い。可愛いじゃねえか! そんな目で見られたら、断れないじゃないか。こ、これが巷で噂の泣き落としという奴なのか!? そうなのか!?
「だ、め?」
「……………………よ、よろしくお願いします」
 泣き落とされた。
 俺の返事を聞いて、楓は「やったぁ!」と無邪気に喜んでいる。……まったく、俺って何でこんなに優柔不断なんだろう? 前回だって、それで痛い目にあったっていうのに、全然反省が生かされてねぇ。
「それじゃあ、ちょっと何か作ってみるね!」
 そういいつつ、楓は意気揚々と台所に向かう。
「…………はぁ」
 思わずため息をつく。まぁ、あいつもあれで、天然ではあるけど馬鹿ではないだろう。そんな、ギャグ漫画みたいな展開が待っていることはない、はず。たぶん。
「っていうか、楓。お前、料理とかちょくちょくやるのか?」
「ん? あんまりやったことないよ」
「…………」
 さいですか。
 なんか、一瞬にして死亡フラグが立ったような気がした。
「ねぇ、陽君。マスクってどこにあるの?」
 俺の不安をよそに、楓は無邪気な声で聞いてくる。あー。ほんと、邪気のない声って罪だよな。
「あん? マスク? ――ああ、つばとか入らないようにか」
 何だかんだでいろいろ考えているんだな。これなら少しは期待してもいいのではないだろうか? と、前言撤回しつつ思う。
 しかし、そんな俺の思いなどまったく知らないで、楓は付け加えてくる。
「ううん。違うよ」
「え? じゃあ何でだ?」
「煙を吸わないように」
「は?」
 煙? ――どういうことだ?
「えっと……なんだ? お前、蒸し料理でもするのか?」
 それはそれでレベルが高い。そんなものを、この楓ができるのだろうか?
「ううん。そっちじゃなくて、黒い煙」
 黒? 煙が黒?
 頭の中が混乱してくる。
「……あのさ、料理で、なんで黒い煙が出るわけ?」
「え? 料理の基本でしょ? 黒い煙が出るのって。ほら、黒い煙が出るまで火にかけよう、って」
 …………。
 前言再撤回。
 情報を整理。
 確認。これから自分がやるべきことの判断。
「さて、じゃあ始めますかっ」
「とにかく台所から離れろ。楓」
 頼むから、殺さないでくれ。
「いいよぉ。遠慮しなくても」
「い、いや、遠慮とかじゃなくて、その、マジの話、やめ……」
 て、と言おうとした所で、俺の唇に楓の人差し指が添えられた。
 思わず言葉を止める。
 楓は、その持ち前の童顔でにっこりと笑うと、易しく言った。
「もう。男の子は遠慮しちゃ駄目なの」
「…………」
「お料理のことは私に任せて。ほら、一足早い新婚生活だって思えばいいじゃない。ふふ、あこがれてたんだ。私」
「――――」
 料理を一度も作ったこと無いのにか?
 そうなのか?
 そう思うが、言葉が声にならない。ええい、どうしたんだ俺の声帯器官。どこで狂いやがった!?
「それとも、陽君は私のお料理食べたくないの?」
「そ、そういうわけ、じゃ……」
 い、いや、だからその涙目止めろ……。
 ここまでされたら、後はなし崩しである。
 というか、ついさっきとまったく同じパターンである。
 ――結局俺は首を縦に振った。
「よしっ。じゃあ、一丁やってやりますかっ」
「…………」
 勇み足で台所に向かう楓を尻目に、胃薬を探す俺。いや、マジで必要だと思うからさ。多分絶対必要だって。
 まあ、そんなこんなで、この後黒煙が部屋の中に充満したこととか、充満した黒煙の所為で火事と間違えられて消防車が出動してきたとか、その後警察署でこってり俺が絞られる羽目になったとかいう、そんなよしなしごとは置いておくとして。
 一言。
 黒焦げのお魚はやっぱりまずかったです。
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西織

Author:西織
この欄を編集するのを完全に忘れていた男。今年の四月に新社会人という名の社畜人生に一歩を踏み出した。



性別:男
年齢:22歳
血液型:A型
趣味:読書&執筆
将来の夢:作家(前途多難)

本の感想などを見たい人は、こちらをどうぞ
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自作小説専門のブログ作りました。
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