空っぽの知識
 かたよりまくった読書くんの日記
どきどき! シスター・コンプレックス
 書くことがあるけど、書きたくないので小説アップ。

 ライトノベル作法研究所で、初めて百点を越した作品。陽君シリーズ第三弾!『どきどき! シスター・コンプレックス』

 シスターコンプレックスの意味は『女姉妹に対して強い執着を持つ』が正しい解釈らしいですが、この作品にとっての意味は『妹への劣等感』ということにして置いてください(まあ、それでも意味わからんが)


 それでは、続きから読みんしゃい!



 どきどき! シスターコンプレックス


「ま、そう言うわけで。よろしく頼むぞ、陽兄」
「……帰れ」
「む。そんなこと言うな。陽兄。これから一緒に暮らす仲ではないか」
「お前のアパートに帰れ」
「やだなぁ。さっきから言っておるではないか。火事になったから追い出されたって」
「じゃあ実家に帰れ」
「それこそ無理ではないか。どうやって九州まで帰れというのだ? 私は無一文もいいところだぞ?」
「………………」
「ん? どうしたのだ? 陽兄」
 無邪気な笑みを浮かべて話しかけてくる小鳥。何の冗談か、彼女の両手には枕が握られていたりする。他に手荷物は小さなポシェットのみ。
 自分の顔が引きつっているのが分かる。
 誰か、……助けてくれ。


 事の発端は一時間前、大学の授業が休講になったため、早めに家に帰って惰眠を貪っていたときにかかってきた一本の電話である。
 相手は意外なことに母親だった。
「ああ、久しぶり。いきなりどうしたんだ?」
「ちょっと頼みがあってね。小鳥は、もうそっちに行った?」
「は? 小鳥? どうしてだ?」
「いやね、――あの子がそっちの大学に合格したのは知っているよね?」
「ああ。それは知ってるけど……」
「でね、そっちでいいアパート見つけて、一昨日に引っ越したんだけど」
「だけど?」
 どうにも歯切れが悪い。言うのを躊躇っている感じがする。一体何をそんなに躊躇っているのだろうか?
「そのアパートが昨日火事になっちゃったんだよね」
「………………」
 は?
 一瞬、頭の中が全てフリーズする。
「って、ちょっと待て。小鳥は!? 小鳥は無事なのか!?」
「その点は大丈夫よ。逃げるのが早くて助かったらしいから」
「そ、……そう、か」
 小鳥が助かったと知って一安心。大事な妹だ。もし何かあったと思うと……。
「でね、そのアパート、結局全焼しちゃって、小鳥の住むとこなくなっちゃったの。それで、ものは相談なんだけど、陽の家にしばらく泊めてくれない? もう少しであなたの家に着くらしいから」
「は?」
 母の声を聞いたとたん、頭がまた真っ白になった。
 小鳥を、家に泊める?
 妹を、家に泊める?
 この、生活スペース実質四畳半の部屋で、しばらく妹と一緒に暮らす?
「じゃあ、よろしくね」
「――って、よろしくねえ! このくそせめぇ部屋でどうやって暮らせって言うんだよ!」
「あら、寝る空間さえあればだいたい暮らせるものだよ」
「……あの、俺、生活今でもかなり苦しいんだけど?」
「努力と根性」
「ふざけんな!!」
「だいじょーぶだいじょーぶ。それに、女の子が部屋にいれば明るくなるでしょ?」
「俺の生活が暗いって確定させんな! それに、俺に彼女がいるのも分かってるだろうが!」
「ああ、楓ちゃんだっけ。小鳥もすごくなついてたみたいね」
「何事もなかったように話そらしてんじゃねえよ! 彼女がいるってのに妹となんて暮らせるか! って、あれ? もしもし! もしもーし!」
 切りやがった。
 俺の自適悠々ライフは、これにて終焉を迎えることになったり。


 そして冒頭に戻る。
「いやあ、相変わらず狭い部屋だな。陽兄」
「文句があるなら帰れ」
「はは。そういうな。私はこれでも褒めているのだぞ?」
 嘘つけ。
 その台詞のどこをどう見たら褒めてるように見えるのか教えて欲しい。
「うお、お風呂も狭い」
「頼むから狭い狭いって言うな。無茶苦茶苦労して探したんだから」
「え? こんな劣悪な環境に、好んで住んでいるのか?」
「やっぱりけなしてんじゃねぇかよ! 劣悪って言うなっ! 家賃四万でまともに住めるとこなんて都内じゃほとんどないんだぞ!」
 ……これだから嫌だったんだ。こいつと一緒に暮らすのは。
 ちなみに、正確には家賃四万六千円だったり。
「はあ。ま、とりあえず座ってろ。お茶でも注ぐから」
「ふむ。ありがたい。あ、そうだ、お風呂を汲んでもいいか? 昨日から風呂に入ってなくて気持ちが悪いんだ」
「ああ、分かったよ。俺が汲むからお前はおとなしくしてろ」
 そう俺が言うと、小鳥はあっさりと「分かった」と言って静かに座る。
 先に風呂を汲んでから台所に立つ。とりあえずお茶でも飲みながら、今後のことを考えよう。しばらく泊めるくらいなら構わないだろうが、さすがに年頃なんだから、兄妹といえども二人暮らしはまずい。俺にだってプライベートはあるし小鳥にだってある。あいつだって、詮索されるのは嫌だろう。俺だって嫌だ。
 まあ、明日辺りに不動産周りを一緒にしよう。
 そう結論付けながら、お茶を持って居間に戻る。
「ほれ、お茶。……って、何やってんだテメェ!」
「ん? 何って、エロ本探し」
 探し、というよりは、すでに鑑賞に突入している小鳥。
 彼女の周りにはすでに数冊のあれが散らばっている。
 プ、プライベートもクソもねえ!
「しかし、無用心だぞ。陽兄。以前から隠し場所が変わっていないというのは」
「うるせえ! 返せ! 今すぐ返せ!」
「おお! すごいなこの本。丸見えではないか」
「丸見えだから十八歳未満は見るなって言われてんだよ!」
 無理やり小鳥をエロ本からはがす。力を入れすぎて、もう少しで破れかかったが、どうにか現状を維持して俺の宝物を奪取。
「むぅ。良いではないか。女が女のあえいでいる姿を見たところで」
「……それはそれでどうかと思うぞ?」
 声が本気に聞こえたから、尚のこと心配になる。
 俺の妹は大丈夫なのだろうか?
「それに、十八歳未満お断りとは言うが、陽兄は中学生の頃から持っていたではないか」
「何で知ってるんだよ!?」
「ベッドの下右端隅」
「……う」
「タンスの上から三段目左側」
「ぐ、な、んで……」
 ま、まさかこいつ、俺が実家にいた頃から漁ってたのか!? はっ。そういえば、ちょくちょく俺の部屋に侵入してたけど、まさかそんなことをやってたのか!?
「なに、生理現象だ。恥ずかしがることではないぞ、陽兄。それどころか、褒められるところだと思うぞ?」
「……お前に言われても何の救いにもならねぇ」
 むしろ突き落とされたような気分だった。
 がくりと落ち込む俺。
 そんな姿を見て、小鳩がふと声を漏らす。
「ふむ。わかったぞ」
「何が?」
 小鳥は、俺の持っているエロ本を見ながら妙に納得したようなしぐさをする。一体何が分かったというのだろうか?
「ツインテール、ロリ、めがね、貧乳。これが陽兄の好みだ」
「何を人の趣味決定付けてんだよテメエは!」
 嫌がらせもここまで来たら敵意だ。
 俺、なんか怨まれることでもしたのかなぁ?
「へ? とてもいい趣味ではないか」
「とても特殊な趣味じゃねえかよそれじゃあ!」
「でも、陽兄のエロ本のラインナップを見てみると、妙に偏ってるぞ?」
「は? って、そんなことあるわけ……」
 あったりする。
 確認してみて分かった。偏ってる。ツインテールが舞い、無邪気なロリが笑って、めがねが赤くなっている。それはもう、面白いくらいに。
 う、うわっ。痛ぇ!
「…………俺、自分が生きているのが恥ずかしい気がしてきた」
「恥ずかしがることはない。生理現象だ」
「テメエはもっと恥ずかしがれ!」
 羞恥心というのがないのだろうか? こいつには。
 よぉく分かった。俺の妹はもう駄目だ。嫁の貰い手以前に、まともに付き合える奴がいるかも怪しい。少なくとも、俺は嫌だ。
「んー。しかし、疑問だな」
「何が?」
 今度は何が来るのかと、思わず身構える。こいつが口を開くと何がくるか分からない。今度はどんな俺の恥ずかしき趣味が明らかになるのか……。
「ツインテール、ロリ、めがね。そこまでは分かる。だが、何で貧乳なんだ?」
「どういう意味だ?」
「何を言っている。そこまではまんま千堂楓さんじゃないか」
「……へ?」
 千堂楓とは、俺の彼女である。俺は彼女の姿を思い浮かべる。
 背まで届く髪の毛は、ツインテールにして結んでいる。視力が悪いので、常時めがね着用。天然で、童顔。ロリっこ条件も果たす。
「う、うそ、……だろ?」
 自分の趣味だけでも再起不能物なのに、それに加えて知らず知らずのうちに彼女に自分の妄想を重ねていた。
 し、死にたい!
 ヤバイ! もう恥ずかしくて死にそうだ!
「でもな、貧乳、ってのだけが納得いかないのだよ」
 狼狽しきっている俺を小鳥は容赦なく追撃をかけてくる。
「……これ以上なんの納得がいるというんだ?」
「だって楓さん、なかなかいいバストをしていたぞ?」
「ま、まあ、確かに」
 小鳥の言葉に曖昧に返事をしながら、俺は楓のバストを思い浮かべてみる。あの、決して慎ましくはない、彼女のふくよかな胸が俺の頭の中で一杯になって――
「…………」
 顔が真っ赤になるのが分かる。
 い、いかん! これ以上思い浮かべるな!
「ふふ。陽兄はエッチだなあ」
「う、ぐぅ」
 反論できないのが苦しい。
 何も言えない俺に、小鳥はにやりと笑いつつ顔を近づけてくる。
「くふふ。陽兄。その、『貧乳』という項目だけは、楓さんではカバーできなかったようだな。だからこそあえて言わせて貰うが、私のバストはこの間測ってみたところ、Aの六十二であったぞ。――お、目の色が変わったな、陽兄。もしかして、欲情したか? ……って、あれ? 何でそんな人を哀れむような目をするのだ?」
「…………前々から、お前の胸って小さいな、とは思っていたけど、そこまでなかったんだな……」
 欲情なんて、程遠い。
 むしろ萎える。
 なんか、現実を知ったみたいで。
 俺の反応がよほど意外だったのか、小鳥は珍しく狼狽する。
「へ? え!? 嘘! なんで――ま、まさか、間違えた!? 私、陽兄の趣味、間違えた!?」
「間違えまくりだ! 貧乳だろうが巨乳だろうが、俺は別に胸の大きさなんてどうでもいいんだよ!」
「そんな! な、何たる失態! まさか私ともあろうものが、変態ロリコンの趣味を理解し間違えるとは! くそっ。二年も離れていればさすがに勘が鈍るか!」
「って、テメエは何気に俺のことを変態のロリコンって言ってんじゃねえ!」
「何を言う。中学二年生のときに、年下の可愛い女の子が好きだ、って時点で変態ロリコン決定ではないか」
「年下っつっても一つ下ってだけだろうが! なんで一歳違いで変態ロリコン扱いされなきゃならんのだ!」
「では、少女趣味で」
「余計たちが悪いわ!」
「夜な夜な街に出ては通りすがりの人間に裸体をさらす男のロマン!」
「突っ込むところが多すぎるが、大切なところがどうしても二つあるからそこだけ突っ込んでおく! 一つは、それはロリコンじゃなくてただの露出狂だ! そして二つ目、そんなところに男のロマンなんて言葉使うんじゃねえ! 男のロマンはもっとかっこいいものなんだ!」
「例えば、本棚の裏にエロ本を集めたり?」
「そうそう、それこそ男のロマンの醍醐味……って、改善されてないじゃねえか!」
 ノリ突っ込み。
 それは、誤魔化すときにも使えることを学んだ瞬間だった。
 そして、突っ込んだ瞬間にどっと疲れが襲い掛かってきた。なんだか体が重い。どうして休日に、家にいるにも関わらずこんなに疲れなければならないんだろう?
「……な、なあ、もう疲れたからさ、止めないか?」
「何を言う。これからがシモネタトークの本領発揮ではないか!」
「女の子がシモネタトークだなんて言ってんじゃねえ! っつか、言っとくが、俺はそれを始めたらほんとに止まらないぞ!?」
「よいではないか! 一緒に楽しもう!」
「そこまで行っちまったら俺はもう楽しめねえんだよ! そ、そうだ! いいからテメエはとっとと風呂に入れ!」
 なんだかんだで忘れていたが、お風呂を汲んでいたんだった。あの狭いお風呂ならいい加減溢れるだろう。それにかこつけて、俺は無理やり話を中断させる。
 俺がそう言うと、小鳥は不平を言いながらもしぶしぶお風呂の準備をし始めた。準備、と言っても、小鳥はほとんど荷物など持って来ていないから、準備するのはバスタオルくらいだ。ちなみに、服は俺の服を貸すことにする。下着については……この際何も言わないでくれ。
「陽兄」
「あん? なんだ?」
「覗いてもいいぞ?」
「無駄口叩いてねえでさっさと入れ!」


 そして、三十分くらいが経った。
 その三十分は、俺にとってとても有意義なものであったと言えるだろう。なんだか、久しぶりに自由な時間を手に入れたような気分になった。……しかし、考えてみたら小鳥が来てからまだ一時間もたっていない。それなのに、どうしてこんなに疲れなければならないのだろうか? それ思うと、これからの生活が思いやられる。
 疲れを吐き出すかのように、大きく溜息をつく。でも、実際は溜息するたびに溜まってるんだよな。疲れ。そんなことを思いながら、また溜息。
 そんな動作を何度繰り返したかは分からないが、しばらくして風呂の戸が開く音がした。俺は首だけ動かして、小鳥が居間に入ってくるのを見る。
「いやあ、さっぱりしたぞ。陽兄」
「……もう俺は何も突っ込まねえよ」
 裸にバスタオルだけと言う格好で居間に入ってきた小鳥に対して、俺は力なく言うと、首の位置を元に戻して机に突っ伏する。いや、本気で、もうそんな気力ないですから。
「むぅ、面白くないなぁ。陽兄」
「世の中面白いことだけでできているわけじゃないのですよ。姫」
「ふふ。確かに、世の中そう甘くはないな。でもな、陽兄。私はいつも面白くないことがあったら――自分で面白くするのだよ」
「ああそうかい。で、一体何をどう面白くするんだ?」
「ふむ。そこなのだが、――時に陽兄。陽兄は、貧乳は趣味じゃないと言うことでいいのか?」
「……今更その話題かよ。何度も言わせるな。俺は胸の大きさなんてどうでもいい」
「ということは、私の胸に欲情することはないのだな?」
「それ以前に、妹に欲情するほど俺は欲求不満じゃねえよ」
「ふむ。――それは、安心した」
 心底安心したとでも言うように、小鳥は嬉しそうに言う。そして、その声とともに背中にちょっとした重圧がかかってくる。丁度、小さな女の子が寄りかかってきたかのように。そうかと思えば、今度は俺の首に腕が巻きついてくる。
「やっぱり、人肌は暖かいなぁ」
「おい。一体どういうつもりだ? 妹」
「ちょっとしたスキンシップだよ。兄様」
「離れろ」
「むう。そう無下に言わなくてもいいではないか」
「生憎今の俺はこれ以上の台詞を言う気力がない。だから離れろ」
「……いやだ」
 ギュッと言う音が聞こえたかもしれない。小鳥は、言葉とともに俺の首に巻きつけた腕をさらに強く締めてきた。しかし、力をうまく調節しているのか、首への圧迫感はあまりない。優しい抱きしめ方。まるで、大切なものを離したくないとでも言うように、小鳥は俺を抱きしめてきた。
「? 小鳥? どうしたんだ?」
「あと、少しだけ。……お願いだから、もう少しだけ、このままの状態でいさせてくれ」
 声がかすかに震えている。今までの、頼もしそうな声とは調子が違い、何かにすがるような声。
 やがて、ポツリポツリと、小鳥は喋りだす。
「怖かった、んだ。越してきた、ばかりで……これから、新しい毎日が、始まるって……そんな風に、思っていた。なのに、いきなり、火事なんかで……」
「小鳥……」
 いつもとは調子が違う小鳥を意外に思ってしまう。いつもは、どんなことがあっても不適に笑っているような奴なのに。それなのに、今はこんなに弱気になっている。おそらく、さっきまでのはから元気だったのだろう。無理にでも、元気な姿を見せていたかった。だからこそ、あれだけはっちゃけていたのだろう。
 それが分かると、小鳥がとても儚く感じる。空っぽの元気で、自分を紛らわせている。
「――安心して、いいんだよ」
 だから俺は、小鳥の手に自分の手を重ねて、優しく言う。
「ここは、俺の家だ。ここにいる限りは、俺が守ってやるよ。もう、辛いことはないんだ。だから、リラックスしていいんだよ」
「陽、兄」
 途切れるような、小さな声で、小鳥は俺の名前を呼ぶ。震えている。泣きそうなのを必死にこらえているのが背中越しに分かる。だから俺は何も言わない。ただ、小鳥の好きにさせようと思った。
 じっと、小鳥に抱きしめられた状態が続く。どれくらい経っただろう? あんまり、時間が経った感じはしない。おそらく、一分くらいだろう。そう、そろそろ、小鳥の震えも収まってきたというその時のことである。
 扉が開いた。
「やっほー! 陽君っ。遊びに来たよ!」
 軽快な音とともに、異様にテンションの高い声が聞こえる。俺の彼女、千堂楓の声だ。――そして、全てが固まる。場が、凍る。時間が、止まる。
 空白の時間って、こういうことを言うんだな……。
 今の状況を一言で説明しよう。バスタオル一つの妹が自分の兄に抱きついているところを兄の彼女が目撃したという衝撃的光景である。
「………………」
「………………」
「………………」
 三点リーダーが一巡する。
 って、ちょっと待て! なんだ!? 何が起きてるんだ!? 一体何の因果でこんな危機的状況に俺は追い込まれなければならないんだ! 前世!? 前世が悪いのか!? 俺の前世は蛙だって言われたけど、それのどこが悪いんだよ! はっ。そういえば、この間有名だとか言う占い師の言葉を完全無視したな。それが悪いのか!? それとも過去か!? 俺が昔何をしたって言うんだよ畜生!
「あ、……あ、あ」
 ああ、楓の口が開く。ヤバイ、何を言う気だ、あいつ。い、いや、誤解だ! 誤解なんだよ楓さん!
 俺の心の中の弁解もむなしく、楓の口は開かれ、予想以上に大きな声が響く。
「ああー! 小鳥ちゃんずーるーいー!」
 へ?
 予想外の言葉に、頭が真っ白になる。
 そんな俺には構わず、意味不明な絶叫とともにものすごい勢いでこちらに駆けてくる楓。そして、ダイブ。小鳥の上から俺に抱きついてくる。
「駄目―! 駄目駄目駄目駄目駄目だーめー! 小鳥ちゃんずるい! 陽君は私の物なの! 独り占めするのは駄目!」
 ……って、楓の物。
「む、何を言っておる。陽兄は私の兄なのだから、私の物に決まっておろう」
 小鳥回復早っ。さっきまで泣きかけてたのはいったい何なの!? そして、回復してすぐお前は何でノルんだよ! ってか、お前もお前で俺を物扱い!?
「陽君は私の彼氏なの!」
「陽兄は私の兄なのだ!」
「陽君は、私に優しいの!」
「陽兄は、私にも優しいぞ!」
「ねえ、陽君!」
「なあ、陽兄!」
 二人がいっせいに俺に同意を求めてくる。
 そして、どちらも負けじとぎゅっと俺を締めてくる。
 く……苦しい。
 そんな俺には構わず、二人はどんどん暴走する。
「どうして答えないのだ。陽兄」
「そうよ! 何で答えないの!?」
「む、なんだか困っている様子だな」
「あ! もしかして、どっちも好きなんだ! だから答えきれないのね!」
「そ、そうか! そうなのだな。さすが楓さん!」
「だから、陽君は私と小鳥ちゃんの二人の物だよ!」
「そうだな! 二人の物だな!」
 二人して、なぜか手を取り合っている。――俺を絞めたままで。
 そのまま、二人は喋り続ける。話の半分以上聞き取れない。ヤバイ、意識が朦朧としてきた。
「だあああ! いいから離せぇ! そして、俺は誰の物でもねえ!」
 まあ、そんなこんなで。
 オチもへったくれもない話はとりあえず締めるとするが、余談を言うと、この後一ヶ月たった今でも、俺と楓と小鳥の微妙な三角関係は続くことになったり。
 まあ、とりあえず一言。
 誰か助けてくれ…………。
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プロフィール

西織

Author:西織
この欄を編集するのを完全に忘れていた男。今年の四月に新社会人という名の社畜人生に一歩を踏み出した。



性別:男
年齢:22歳
血液型:A型
趣味:読書&執筆
将来の夢:作家(前途多難)

本の感想などを見たい人は、こちらをどうぞ
『空っぽの知識(読書日記)』
http://emptyreader.blog81.fc2.com/

自作小説専門のブログ作りました。
『空っぽの知識(自作小説)』
http://emptynovel.blog83.fc2.com/

同じFC2ブログを三つも作ったことにより、他のブローカーに訪問者履歴的な意味で迷惑が……あの、本当に申し訳ございません。


何か連絡があれば、こちらにお願いします。
alred_marchen☆hotmail.co.jp
(☆を@に変えてください)



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