空っぽの知識
 かたよりまくった読書くんの日記
『車輪の国、向日葵の少女』 三章 感想

 ……車輪の国の、三章目、終了……



 優しすぎるぜ、灯花……



 そんなわけで、感想行きます。







 まず、一言をあげるとしたら……


 「私は、一生子供でいい!」




 もう、ラストはいいセリフがいっぱいありましたけど、灯花のルートで一番の主題はこのセリフまでの流れに凝縮されていると思います。

 『大人になれない義務』を背負っていた灯花。たとえ義務が解消されたとしても、それまでの名残で自ら選択することができない。自ら歩むことができない。そんな彼女に課せられた、一番の試練。
 悩みに悩んで、それでも決められなくて。結局、また人に決めてもらって。それでも、彼女は自分で選択しなかった。いや、選択しないことを選んだ。
 大人になるには、何かを選んで何かを捨てていかなければいけない。その過程で、誰かを傷つけることになっても仕方がないこと。そういった仕方がないことを越えていって、人は大人になっていく。それを灯花はしたくないといった。そういったことでしか大人になれないのなら、大人になんてならなくていい、と叫んだ。

 そこまでの流れで、灯花が自分で『決める』ようになって、大人になることが主題だと思っていたんですが、そうではなかったんですね。そういう風に切り捨てていくだけが成長じゃないんだということを示すような話だったと思います。いや、正直解決法自体は難しい話じゃないんですけど、その意味を考えるとすごいなぁと思います。




 っていうか、前半は確かに灯花がヒロインでしたけど、後半は明らかに京子さんがヒロインだよな……




 前半は、とにかく京子さんが怖かった。明らかに精神的に不安定で、どんどん灯花に対する義務がひどくなっていって。父親からの手紙の下りは、たぶんそういうことなんだろうなぁとは思っていたのですが、さすがに目の前で破るのはまずいですぜ京子さん。まあ、あとで誤解は解けましたけど。(でも、ひとつ疑問なのが、どうして破いた手紙をセロテープで張り付けてたんだ……?)

 研修に行った京子さんを、灯花の「助けて」の一言で助けに行った賢一はすごくかっこよかった。その時に流れた『watch out!』っていう曲がまたいい。洞窟に閉じ込められたさちを助けるときにも流れましたが、これ流れるとすげーテンションあがるわ。今まで何もできなったが、今はできる。そんな自信に近い何かを感じられます。

 そのあと誤解を解いて、親子で話すところは本当にしんみりとしました。一応、いろいろなぞも解けましたしね。何で片親なのにどっちも『大音』なのかはすごく気になっていたんですけど、なるほど、って感じです。かなり複雑ですねぇ。



 次の日からの京子さんの豹変には爆笑しました。やべえ、なんだこの馬鹿親!
 精神的に安定していないのは確かなんだろうけど、本当に灯花のことが好きなんだなぁと思えるシーンでした。全部見終わったあとに、このぶっ壊れた京子さんを見返すと、なんともいえない気分になります。



 で、後半は、とにかくじれましたね……

 提起された問題は、そもそもあの『手紙』の件があったので、「いや、それは大丈夫なの?」ってずっと心配だったんですが、とりあえず話がサクサク進んで行ったので、『大音夫妻は改心した』ってことで話を進めてみました。
 まあ、それは一部正しかったみたいで、とりあえず相手の親が最低な親だった、っていう話はなかったようです。なので、どちらかといえば後半の問題は京子さんの心の闇の方。

 たいていの謎は明かされていましたが、本当に核心に迫る部分だけはぎりぎりまで明かされてなかったんですよね。
 灯花が火傷を負った時のCGに関しても「あれ? だったらこの構図おかしくない?」とはずっと思っていました。京子さんは、『鍋をしていた』って言っていたので、だったら台所の場所と立ち位置が逆じゃないか?と。最初は原画のミスか、と思ったんですけど、ちゃんとそこも回収されてくれてよかった。

 ……っていうか、賢一よ。切り出すタイミングが悪すぎるぜ。もうちょい早くいうこともできなかったのか? 灯花が火傷を負ったのはケーキを焼いていたとき、って言った時に違和感はあったはずだし。


 まあ、でもそのあとの展開はよかったのでとりあえず文句はなしです。


 賢一の告発で壊れてしまった京子さんの暴れっぷりは、今まで感じていた不気味な均衡が崩れたんだ、ってことを意識させてくれてやばかったです。なんか、ずっと不気味だったんですよね。その理由は、京子さんの告白で全部理解できました。
 親から愛されない子供が親になったら。しかも、それが実の子供じゃなかったら。もともと危うかった精神が壊れていく。叫ぶ京子さんの姿は、駄々をこねる子供のようでした。どうして自分は不幸だったのに、灯花は幸せそうなのか? 自分はとても辛い思いをしてきたのに、どうして灯花は楽にしているのか。そんな稚拙な、それでいて心の奥底に根を張った感情がすべて爆発した剣幕は、恐ろしいほど。悔しくて、うらやましくて。
 京子さんは大人に成りきれていなかったんでしょう。そもそも、大人に成れなかった、といった方がいいのかもしれない。親にまともに接されなかった自分が、まともに娘に接することができるわけがない。そんな気持ちが、強迫観念としてずっと付きまとっていた。自分は大人に成りきれていないと、半ば暗示のように思い込んでいた。だから、ときおりあんなに不安定になったし、灯花に対してひどく当たってしまった。

 そんな京子さんを救ったのが、灯花の優しさだったってのが、すごく良かった。
 昔、京子さんが自分の母親にされたように、灯花の手料理を拒絶したというのに、灯花はそれすらも受け入れた。「おかわり、あるから」って彼女が言った時は、本当にやばかったです。母親の苦しみを全部受け入れてやる、という覚悟があるその一言が、どれだけ強いことか。
 灯花は優しいというのは、これまでの話を見ていればわかったことですが、それでもここまで凄いとは。
 でも、考えてみれば簡単な話です。これまで灯花は、その優しさを向ける場所がわからないでいた。だからずっと悩んでいたけれど、ひとたび自分がどうすればいいか分かったら、彼女は向ける感情を惜しまない。その優しさを、惜しみなく与える。

 大人にならなければいけなかった少女が、『大人にならない』を選択することで成長する、っていうのがいいなぁ、と思いました。


 ああ、しかし本当に優しいなぁ。
 最後の選択だけじゃ、ここまでやさしいとは思えないんですよね。それまでの積み重ね、三章全体で表現された灯花の性格があったから、最後の選択にうなずけるし、その優しさに感動できる。子供っぽいけどわがままじゃない、人を思いやれる優しい子。そのひたむきな優しさは、それまで優しさに触れることのできなかった京子さんにとってはこれ以上ないものでしょうね。





 ……っていうか、なんかマジで灯花が主人公で京子さんがヒロインな気がしてきた。
 まあ、賢一は必要な存在だったんですけどね。その場にいて、大音親子の成り行きを見守っていることが必要だった。第三者っていう視点がなかったら、灯花も京子さんももっと早く駄目になっていただろうし。

 はぁ。しかし、京子さんが救われて良かったなぁ。(←なんかもう、これが一番大切な気がする)
 もう僕の中でベストヒロインは京子さんです。





 あー、垂れ流したらものすごく長くなった。


 さて、とりあえず次は夏咲です。「どもどもです」の夏咲。メインヒロインのはずの彼女には、どんな話が待っているのか。



 そういえば、結局「ぶっ殺すぞ」ってのはなんだったんでしょうね……



 PS:
 璃々子姉ちゃんやばすぎ。変態だー!
 ハードMへの第一歩。マジパネェ。


 さらにPS:
 最後の法月さんの話ですが……。あれはどう解釈すればいんだろうか。もしあの話が真実だとすると、ちょっと行き過ぎなきもしないでもないんですよね。まあ、法月さんの権力があれば家庭裁判所の記述とかも偽れるかもしれないけど、最後に法月さんが笑い飛ばしたりもしたので、なんともいえないなぁ。それに、もし偽装家族が本当だったら、わざわざ灯花に会いに来るって約束するのもおかしいし……
 タイミング的に抜群だった理由は説明できるんですけどね。どうも、なんかその説明で納得したくないって気持ちが強いです。なにぶん、まなの時とは違って、そこまでの必要がない気もするので。
 まあ、願望ですけどね。

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この欄を編集するのを完全に忘れていた男。今年の四月に新社会人という名の社畜人生に一歩を踏み出した。



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将来の夢:作家(前途多難)

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